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公益財団法人渋沢栄一記念財団情報資源センターがお送りするブログです。
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 1925(大正14)年10月23日 (85歳) 『論語講義』の発行 【『渋沢栄一伝記資料』第41巻掲載】

是より先大正十二年四月、二松学舎に於て講義録を発刊、栄一論語講義を担当し、その口話筆記を連載し、是年九月に至り完了す。
是日二松学舎出版部より、右筆記を合冊し「論語講義」(乾坤二巻二冊)と題して発行す。

出典:『渋沢栄一伝記資料』 3編 社会公共事業尽瘁並ニ実業界後援時代 明治四十二年−昭和六年 / 1部 社会公共事業 / 4章 道徳・宗教 / 1節 儒教 / 18款 栄一ノ論語ニ関スル講演談話ヲ編集セルモノ / 4 論語講義 【第41巻 p.360-370】
・『渋沢栄一伝記資料』第41巻目次詳細
http://www.shibusawa.or.jp/SH/denki/41.html
1925(大正14)年発行の『論語講義』乾の冒頭で渋沢栄一は次のように語っています。

『論語講義』乾  渋沢栄一口話 尾立維孝筆述 第1-11頁 大正一四年一〇月刊
  論語講義巻之一
           二松学舎長 子爵渋沢栄一口話
           二松学舎教授 尾立維孝筆述
    論語総説
[前略] 総説の終りに臨み一言せざるべからざるものは、儒教と経済と合致即ち教と行と合一不二の物となす事である。儒教即ち孔子の教は固より紙上の空談高論にあらず。一々之を日常生活の上に実行すべき道である。人は血液の循環する生物なれば、衣食住の欲求なかるべからず。衣食住の給与は則ち経済の道に依らざるべからず。人道も礼節も経済を離れて行はるべきものにあらず。故に衣食足而知礼節との古訓あり食ふ事も衣る事も出来ぬ人に向つて仁義忠孝の道を行へ礼儀作法を行へと言ふ事は出来まい。[中略] 余は堅く信ず。学問は学問の為めの学問にあらず人間日常生活の指南車たらんが為めの学問なり。即ち学問は人生処世上の規準也。故に実際を離れたる学問なきと同時に。学問を離れたる実業も亦存せざる也。是を以て余は平生論語と算盤説を唱へ実業を論語に一致せしめんと企図し。余が尊信する故三島中洲先生は同工異曲とでも云ふべきか。論語を経済に合一せしめんと説かれき。
之を要するに中洲先生も余も共に学問と事業とを結び付けて、睽離せしめず以て知行合一の極致に到達せんと欲するなり。余は実に此知行合一の見地に立ちて、論語を咀嚼し八十四歳の今日まで公私内外の規準として遵奉し、国を富まし国を強くし以て天下を平かにするに努力したり。[後略]
(『渋沢栄一伝記資料』第41巻p.363, 368)

参考リンク

更新履歴

2014.10.23:参考リンクの書式を変更し、「渋沢栄一『論語講義』の書誌学的考察」を追加