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公益財団法人渋沢栄一記念財団情報資源センターがお送りするブログです。
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 1922(大正11)年12月18日 (82歳) ドイツからの援助依頼を受けて、駐日大使ゾルフを訪問 【『渋沢栄一伝記資料』第40巻掲載】

是より先、今年九月・十月の交、栄一ドイツ国各方面の人人より、窮状を訴へて援助を乞ふ旨の書百余通寄せらる。依つて是日栄一、ドイツ大使館に駐日大使ヴィルヘルム・ゾルフを訪ひ、同情の意を表し、邦貨金千円を贈る。翌大正十二年三月九日ドイツ国首相クノーより感謝状を受く。

出典:『渋沢栄一伝記資料』 3編 社会公共事業尽瘁並ニ実業界後援時代 明治四十二年−昭和六年 / 1部 社会公共事業 / 3章 国際親善 / 6節 国際災害援助 / 5款 ドイツ国難民救助 【第40巻 p.59-63】
・『渋沢栄一伝記資料』第40巻目次詳細
http://www.shibusawa.or.jp/SH/denki/40.html

[前略] 渋沢子爵邸に配達される数多い郵便物の中に曾て名も知らぬ独逸人からの封書が沢山混つてゐるのが発見された、開封して見ると「此頃独逸の経済界は御承知の通りで、従つて私一家の財政も窮し切つてゐます、此際貴下の厚意によつて物質的御援助を乞ふ」と云ふ意味のもので、学者もあれば商人もあり、工業家もあれば農民もあり、色々な方面からの手紙がどれもどれも生活の窮状を訴へて物質的援助を乞ふ事に於ては一致してゐる、[中略] 子爵が大金鉱か何か掘りあてゝ急に世界的富豪になつた訳でもないのに、どうしたことかと不思議がつてゐると、独逸のある新聞に「日本の大富豪大銀行家」と云ふ説明付きで子爵の写真が掲載されてゐる事が知れた、日本の大富豪で大銀行家--独逸人は之を空しく見遁さなかつたのである [後略]
(『渋沢栄一伝記資料』第40巻p.59、『中外商業新報』第13214号(1922.12.20)より)

渋沢栄一は駐日ドイツ大使ゾルフを訪ね、自分は報道されたような富豪ではないが、個人的にドイツが日本の学術・軍事・医学に与えてくれた恩恵と、今後の両国親善のためにと寄付を申出て、邦貨千円を同国の慈善団体に寄附しました。『渋沢栄一伝記資料』第40巻p.60-63には、この時に栄一とゾルフの間で交わされた書簡が紹介されています。
ヴィルヘルム・ゾルフ(Wilhelm Solf、1862-1936)はドイツの外交官、政治家です。第一次大戦中1918(大正7)年に外務大臣に任命され、停戦交渉にあたり、1920(大正9)年から1928(昭和3)年にかけて駐日大使を務めました。ゾルフの名は、上記以外では『渋沢栄一伝記資料』中、第38巻の「財団法人日独文化協会」、第39巻「外国人接待」、第57巻「外国叙勲」「米寿」の項目などに出現しています。