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公益財団法人渋沢栄一記念財団情報資源センターがお送りするブログです。
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 1909(明治42)年8月29日(日) 航海12日目 - 団員総集会開催

渋沢栄一 日記 1909(明治42)年 (渋沢子爵家所蔵)

八月二十九日 曇 冷
昨夜ヨリ風強ク船少シク動揺セリ、午前七時起床、入浴シ、畢テ甲板上ヲ散歩シ、又米国史ヲ読ム、八時半朝飧ス、後一行中各分課ヲ設クル事ニ付テ中野・松方・岩原・堀越諸氏ト会話ス、一時午飧シ、後食堂ニ於テ一行ヲ会シテ、各分課ヲ設クル順序ヲ協議シ、人員ノ定数及其指名ハ団長ニ一任スル事トナレルヲ以テ、余ハ其ノ掛リ分ノ人員ヲ指名ス、後、各分課ニ於テ簡単ナル規程ヲ設クル事トシテ、其手続ヲ定ム、又一行全般ニ係ル経費支弁ノ為メ、各員ヨリ分頭ニ支出スヘキ金額ヲ定メ、会計課ニ納付セシムル事トス、夕七時晩飧ヲ畢リ、後喫煙室ニテ会話シ、又船室ニテ遊戯ス
(『渋沢栄一伝記資料』第32巻p.57掲載)


竜門雑誌』 第262号 (1910.03) p.41-49

    ○青渊先生渡米紀行
         随行員 増田明六記
八月二十九日 日曜日 強雨
此日南風強く、其上強雨にて船体動揺烈し
午前十時よリ団員総集会を開く、青渊先生議長席に就き、去二十七日委員会に於て議決したる団務の部署を報告し、且其取扱員を左の如く指名嘱托したり
  一幹事は団長に直属して左の事務を取扱ふものとす
    一応接 新聞記者其他来訪外人に関する事項
    二儀式 招宴歓迎等に応する事項
    三文案 文書の往復事項
    四右の外団長直轄事項
  一新聞検閲掛は左の事務を取扱ふものとす
    一本団に関する記事及日本よりの諸報告を検閲する事、但参考の為め他の重要なる新聞雑誌を閲読する事
    二検閲したる事項は毎日団長に報告する事、但団長に於て必要と認めたる事項は、団員に報告することあるべし
    三新聞雑誌の種類は会計掛へ申出、其購入を求むるものとす
  一庶務掛は左の事務を取扱ふものとす
    一団長の命令・訓示、其他の必要事項を団員に伝達する事
    二団員の意見又は希望を団長に建議する事
    三団員相互の便宜を計り、努めて意志の疏通を謀る事
    四右の外団長より命せられたる事項
  一会計掛は左の事務を取扱ふものとす
    一旅行中の費用は勿論各自の自弁に属すれども、共同費用に係るものは、団員の醵出金を保管して之より正当の支払を為す事
    二共同費用に充つる為め団員より醵出金を徴収する事、但第一回の醵出金額は如左する事
      一正賓百弗(夫人は其半額)
      一専門家七十五弗(同其半額)
      一随行員五十弗(婦人随行員は其半額)
    三支払は中野委員長の指揮に依る事
    四第一回醵出金にして不足の場合には、会計掛員協議の上其必要額を予定し、団長の同意を得て団員より徴収する事
  一記録掛は左の事務を取扱ふものとす
    一本団日々の重要事項を記録し、且本邦に通信を為す事
次ぎに青渊先生より、前記部署の事務取扱員を左の通指名嘱托したり
幹事 中野武営・松方幸次郎・岩原謙三・堀越善重郎・頭本元貞の諸氏
新聞検閲掛 頭本元貞・石橋為之助・高石真五郎・西池成義の諸氏
庶務掛 大谷嘉兵衛・上遠野富之助・渡瀬寅次郎・松村敏夫・田村新吉・高辻奈良造・西池成義の諸氏
会計掛 佐竹作太郎・土居通夫・日比谷平左衛門の諸氏
記録掛 巌谷小波
右終りて日比谷平左衛門・高辻奈良造両氏の鐘淵紡績会社に於ける職工の状態に関する講話ありて、且兼て団長より団員は個人的に議論又は賛否を為さざる様との注意に依り、之を諸君に計ると前提して、先きに米国より照会を受けたる日本労働問題に関し、質問を受けたる際は、同社職工の状態を以て、日本に於ける労働者の状態として答弁するも差支無き哉の提議あり、青渊先生は、此一事を以て日本労働者の状態と云ふ事を得ざるべきも、紡績業に従事する日本の労働者は如此状態なりと云ふ位は、敢て差支無かるべき乎と一同に諮りたるが、甲論乙駁の後、遂に代表的意味に於て之を使用するは不可なりとの事に決す
正午航程三百三十二哩、北緯五十度十八分・西経百四十度二十分、南風
(『渋沢栄一伝記資料』第32巻p.74-75掲載)


渡米実業団誌』 (巌谷季雄, 1910.10) p.75-86

  ○第一編 本記
     第二章 渡航日誌
八月二十九日(日)雨風
午前食堂に総会を開き、続て分科会に移り、各申合を起草す。左の如し。
     会計掛申合 ○略ス
     庶務掛申合
 一、庶務掛は左の事務 ○略ス を掌るものとす。
 二、庶務掛に係長一人を置き、大谷君を推薦す。
     幹事申合 
幹事は直接団長に属して、左の事務 ○略ス を取扱ふものとす。
     記録掛申合 ○略ス
     新聞検閲掛申合
   ○一―三前掲ニツキ略ス。
 四、頭本元貞君を掛長に推薦す。
午後総会を開き、高辻氏『鐘ケ淵紡績会社労働者取扱に就て』一場の講話を為し、団員の賛同を需む。
(『渋沢栄一伝記資料』第32巻p.80掲載)


ミネソタ号の正午位置 (北緯50度18分・西経140度20分)


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