『渡米実業団誌』 (巌谷季雄, 1910.10) p.583-590
○第三編報告
第六章 上陸に際し米国新聞紙に発表したる意見
民主国たると、言論を尊重すること、他に比類なきとの理由に依り、米国に於ける新聞紙の勢力は、固より極めて優勢なるものあり。殊に今回の如き我が有力なる商工業者の大団体の渡米は、空前のことに属し、其関係ある所、岩倉大使一行の渡米に比すべきものあるを以て、一行上陸前、米国新聞記者も、多大の期待を以て我等を迎ふべきにより、米国の国風に従ひ、此際有力の新聞紙若しくは通信機関を通じて、米国の公衆に対し、吾人の態度を明かにし、希望のある処をも言明し置くこと、極めて必要なりと認め、八月三十一日、ミネソタ号「ポート・タウンセンド」に到着するや、渋沢団長は出迎ひたる、水野総領事・田中領事及び頭本元貞氏と相談の上、左の趣意を以て一の言明書を作成し、之を以て米国新聞社の要求に応ずることとし、尚今後旅行中に於て、或種の事項、若くは土地に関し、特殊の意見を求めらるる場合の外は、此言明書を以て新聞応接の根本となすこととせり。其要左の如し。
[上陸に際し米国新聞紙に発表したる意見]
以上言明の主意はシヤトル上陸以後桑港乗船迄大体貫徹して之を発表し、為めに米国人をして、吾国の立場及日米関係に於ける日本実業団の態度を会得せしむるに多少の効果ありしと信ぜらる。
(『渋沢栄一伝記資料』第32巻p.91-94掲載)
参考リンク
- 「渡米実業団」のエントリー一覧
- 「渡米実業団」1909年カレンダー(shibusawa.or.jp)
- 「渡米実業団」(shibusawa.or.jp)