是日栄一当会会頭として、ベルギー国特命全権公使ジヨルヂ、ナイト G.Neyt より照会されたる本邦主要貿易商人名並に輸出入品等に関し同公使に回答す。
出典:『渋沢栄一伝記資料』 2編 実業界指導並ニ社会公共事業尽力時代 明治六年−四十二年 (十五) / 1部 実業・経済 / 7章 経済団体及ビ民間諸会 / 1節 商業会議所 / 2款 東京商工会 【第18巻 p.586-590】
東京商工会は東京商法会議所を前身として1883(明治16)年に設立された商業団体で、渋沢栄一は設立以来1891(明治24)年の解散まで同会の会頭を務めています。
1887(明治20)年2月11日、東京商工会はベルギー公使より日本の主要貿易商と扱い品目に関する問い合わせを受け、2月15日に会頭渋沢栄一の名前で回答、7名の貿易商人を紹介しています。また同日、各貿易商会に対して公使からの調査書を転送、取り扱い品目について直接ベルギー公使に回答するよう依頼しています。
東京商工会々外諸向往復文書 第三号
(東京商工会議所所蔵)
各貿易商会ヘ照会案
謹啓陳ハ今般白耳義国公使閣下ヨリ日本国及白耳義国間貿易上ノ便利ヲ図ラン為メ日本ニ於ケル重立タル貿易商人ノ姓名及其商人ノ取扱フ輸出入品ノ種類等ヲ取調ベ出版致度ニ付、別紙廻文並ニ取調雛形共府下各貿易商人ヘ転送候様依頼有之依テ右一葉ヅヽ貴商会ヘ差出候間、何卒貴商会ノ名前欧洲ニ於ケル貴商会ノ代理人ノ姓名及貴商会ニテ御取扱相成候輸出入品ノ種類等、別紙雛形空白ノ場所ヘ御記入ノ上直チニ同公使閣下ヘ御廻報被下候様致度此段別紙相添御照会申上候也
明治二十年二月十五日 東京商工会々頭
渋沢栄一
会内
三井物産会社 益田孝
大倉組 大倉喜八郎
起立工商会社 松尾儀助
日本商会 丹羽雄九郎
会外
刺賀商会 刺賀長介
高田商会 高田慎蔵
森村組 森村市太郎
(『渋沢栄一伝記資料』第18巻p.589-590)
東京商工会ではこの他にも各地の商法会議所や企業からの問い合わせを受けて調査・回答・紹介を行っています。更に農商務卿西郷従道(さいごう・つぐみち、1843-1902)をはじめとする各省大臣、官僚からの照会・諮問を受けて調査・答申を行い、法制定や調整が必要とされる局面では建議書を提出して民間からの声を各省に届けています。
なお、東京商工会に関する記事は、『渋沢栄一伝記資料』中の第18巻の全頁と第19巻p.5-534に掲載されています。同会の起源から解散に至る詳細な沿革については第19巻p.511-534に「東京商工会沿革始末」からの転載として紹介されています。
参考:[今日の栄一]1891(明治24)年11月17日 (51歳) 東京商工会解散記念の宴
〔実業史研究情報センター・ブログ 「情報の扉の、そのまた向こう」 - 2008年11月17日〕
http://d.hatena.ne.jp/tobira/20081117/1226883794