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公益財団法人渋沢栄一記念財団情報資源センターがお送りするブログです。
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 1901(明治34)年4月19日(金) (61歳) 渋沢栄一、瓜生岩子銅像除幕式で演説 【『渋沢栄一伝記資料』第24巻掲載】

是より先、明治三十二年二月土方亀子等の発起により、故瓜生岩子銅像建設の儀起り、翌三十三年一月委員を選定し、栄一其委員長と為る。是日、浅草公園に於て銅像建設除幕式行はれ、栄一之に出席し、一場の演説を為す。

出典:『渋沢栄一伝記資料』 2編 実業界指導並ニ社会公共事業尽力時代 明治六年−四十二年 / 2部 社会公共事業 / 1章 社会事業 / 1節 養育院其他 / 5款 四恩瓜生会 【第24巻 p.292-298】

渋沢栄一 日記  明治三四年     (渋沢子爵家所蔵)
四月十九日 晴
○上略 午後一時浅草公園ニ抵リ瓜生岩子銅像建設除幕式ヲ開ク、発起人委員悉ク来会シ、寄附者来会スル者約三・四百人許リ、藤沢遊行寺上人・浅草伝法院等ノ読経アリテ儀式盛観ヲ極ム、除幕ニ当リテ一場ノ演説ヲ為シ、除幕畢テ後読経回香等アリテ午後五時散会ス ○下略
(『渋沢栄一伝記資料』第24巻p.293)

福島出身の瓜生岩子(うりゅう・いわこ、慈善事業家。1829-1897)は、戊辰戦争では敵味方無く負傷者の手当てを行い、戦後は私費を投じて幼学校を設立、子女教育、窮民救済などに尽力した人物です。
岩子は1891(明治24)年には渋沢栄一の要請を受けて東京市養育院幼童世話係長を務め、その後も福島で産婆研究所や生活困窮者のための病院などを設立、その功績により他界前年の1896(明治29)年には藍綬褒章(らんじゅほうしょう)を女性で初めて授与されました。
渋沢栄一は岩子生前の徳を記念する「瓜生会(後に四恩瓜生会)」が創立された際にはそれを支援、さらに四恩瓜生会会長土方亀子発起による岩子銅像建設にあたっても委員長を務めました。
渋沢栄一伝記資料』第24巻p.296-297には、岩子像除幕式で栄一が行った演説の大意が次のように紹介されています。

瓜生岩子銅像建設報告書  第一―二四頁 (明治三四年)刊
    ○委員長渋沢男爵の演説大意
今日故瓜生岩子刀自の銅像除幕式を挙行するに臨み、此挙を賛成せられたる諸君の此くも奮て御来臨を辱し、非常なる盛会を見るに至りしは発起人・委員一同の実に感謝に堪へざる所なり、不肖は委員長として玆に岩子刀自が生前に経営せられたる事蹟の要を述べて、以て式辞となさんとす
抑々刀自は会津の僻邑に生れ、天性温良にして才智人に勝れ、十四才の時伯父山内春竜に就て教を受けしが、此時より既に種々の慈善事業を企図せられ、其性質の遠く常人に勝れたるものあり、其後数十年間刀自が履み行ひし善行美蹟は、思ふに当時既に芽さしをりしならん
刀自は不幸にして早く夫を失ひ、尋て慈母に別れ、孤児を育て世を渡りし惻隠の心は益す深く、鰥寡孤独を見ては之が救恤に余念なかりき此頃会津地方には堕胎の悪風ありしかば、刀自は深く之を歎き東奔西走之が矯正の法を講し遂に此の悪風を一掃したるは全く其熱誠の致す所なり、次て貧児養育所を設け貧民の子弟を収養し、又学校を立て貧児を教育し、或は病院を設け、其間自己の艱難辛苦を顧みず、又世の特行の人を見れは物を送て其行を励まし、或は時に供養法会を営み以て戦死者・罹災者の亡魂を慰むる等、実に枚挙に遑あらす、其後明治廿四年三月東京市養育院の聘を受け東京に出でたるが、予の刀自に面会したるは蓋し此時にありき、爾来刀自は同院の為め深く力を尽されたり、実に刀自の一生は善行美蹟を以て終始一貫せしものにして、而して其善行美蹟は、決して勉め之を行ふに非ずして、真実天性に出て止めんとして止む能はざるものゝ如し、嗚呼刀自の如きは実に一世に比類なき人なり、之を後世に伝へて亀鑑たらしむべき人なり、是に於て有志者相謀りて銅像建設の事を企図し、広く世間の賛同を仰きしが幸にして無慮千六百有余君の賛同を得、其寄附せられたる金額は実に四千三百有余円の多きに至り、玆に計画を完成するを得たるは発起人委員一同が感謝措く能はさるなり、且此銅像の設計は大熊氏広氏奮て之に当られ、爾来着々工を進め、又鉄柵・台石等も総て予期に違はす完備するを得たり、依て本日即ち刀自が忌日を卜し除幕式を挙行するに至りしなり、云々
(『渋沢栄一伝記資料』第24巻p.296-297)

参考:瓜生岩子さんとは
瓜生岩子を讃える会〕
http://www.fukushi-uryuiwako.com/uryu.html (リンク切れ、2011.04.19確認)
瓜生岩子銅像
〔写真の中の明治・大正 - 国立国会図書館所蔵写真帳から - 国立国会図書館
http://www.ndl.go.jp/scenery/data/26/index.html