会社名
日本銀行 [Nippon Ginko ; Nihon Ginko]
Bank of Japan
書誌事項
日本銀行百年史. 第1巻-第6巻, 資料編 / 日本銀行百年史編纂委員会編纂
東京 : 日本銀行, 1982-1986
7冊 ; 27cm
Title in romaji: Nihon Ginko 100-nenshi
外部機関の所蔵データほか
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「関東大震災」に関する本文の概要 (第3巻p48-125)
- 震災による民間損害額は東京市約25億円、横浜市約7億円で、1923(大正12)年度政府一般会計歳出規模の2倍以上にあたる。
- 東京市内の銀行の8割以上が被災し臨時休業となるが、担保物件の焼失・破損などによる貸出回収難のほうが重大であった。
- 日銀本店の震害はほとんどなかったが、石造りの本館1・2階の一部を除き類焼にあい、創業以来の貴重な諸記録が焼失した。
- 銀行券の入っていた地下金庫は無事で、中央銀行としての機能を一日も停止することなく非常事態に処することができた。
- 9月2日に井上準之助総裁が蔵相に就任、前蔵相市来乙彦が10代総裁に就任。
- 市中銀行に営業再開の支払準備資金を供給し、かつ支払い請求殺到を緩和するため、9月7日に1カ月のモラトリアム(債務の支払猶予)が施行。
- 一般金融のほか、不動産金融、生糸荷為替資金、証券市場復興資金、生命保険金支払資金など特殊資金の融通も行った。
- 本店被害の無かった日本興業・横浜正金・日本勧業等7銀行は9月8日から営業再開。被災銀行の再開へ向けても日銀の援助を進める。
- 営業再開後の預金引き出しは少なく預金者が冷静であったのは、戒厳令による民心の安定、モラトリアムによる債権債務関係紛争の防止、暴利取締令の効果、食糧輸送が早かったことなどによるといわれる。
- モラトリアムは9月末で撤廃され、東京手形交換所は10月から再開。震災手形割引損失補償令が公布され所期の目的をある程度達成する。
- 震災手形割引損失補償令による震災手形の割引は、1924(大正13)年3月末までに累計4億3千万円に上った。
- 震災に伴う特別施策を廃止し常態へ復帰するという、金融調整力回復の努力が図られたが、その後の景気低迷や金融恐慌の発生など回復への道は困難が続いた。
目次にあらわれた「関東大震災」関連事項
項目 | ページ |
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前編 銀本位・金本位制度時代 / 第5章 戦後経済の動揺と金解禁への模索(大正9年〜昭和3年)―中央銀行の苦悩と国際金融協力― / 2. 関東大震災と特別融通 | 第3巻 48 |
(1) 関東大震災の被害 | 第3巻 48 |
(2) 政府の震災対策 | 第3巻 50 |
応急対策 | |
支払延期令の公布 | |
銀行の営業再開 | |
地方金融界の状況 | |
支払延期令の撤廃 | |
震災手形割引損失補償令の公布 | |
(3) 本行の対策1(一般金融の疎通) | 第3巻 62 |
基本方針 | |
貸出金利適用方針の緩和 | |
担保価格の引上げ | |
成規外担保の受入れ | |
指定外倉庫保管商品担保貸出・準指定倉庫の取扱い | |
取引先外銀行に対する融通 | |
国債の買入れ | |
焼損貨幣・紙幣の引換え | |
13年4月以降の常態復帰努力 | |
(4) 本行の対策2(特殊資金の融通) | 第3巻 77 |
不動産金融に対する援助 | |
生糸荷為替資金の融通 | |
証券市場復興資金の融通 | |
生命保険金支払資金の融通 | |
社債償還資金等の融通 | |
為替銀行に対する在外正貨売却 | |
大正9年反動時との比較 | |
(5) 震災手形の割引 | 第3巻 87 |
補償令に基づく政府・本行間の契約 | |
震災手形割引高 | |
震災手形の大口債務者 | |
(6) 金融調節力回復の努力 | 第3巻 103 |
13年5月の本行総裁演説 | |
復興景気の消滅 | |
震災手形の割引歩合引下げ | |
14年4月の公定歩合引下げ | |
高率適用制度の再検討 | |
15年10月の公定歩合引下げ | |
本行の意図 | |
昭和2年3月の公定歩合引下げ |
年表にあらわれた「関東大震災」関連事項 (本行関係のみ)
年月日 | 内容 |
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1923(大正12)年9月1日 | 本店被災(本館半焼、東・西分館全焼) |
1923(大正12)年9月2日 | 井上総裁辞任(大蔵大臣に就任) |
1923(大正12)年9月3日 | 各支店長に対し、本店半焼通信困難につき臨機の処置をとるよう指示 |
1923(大正12)年9月4日 | 震災による焼損貨・紙幣引換えのため臨時事務室を設置(13年9月20日まで) |
1923(大正12)年9月5日 | 第10代総裁に市来乙彦が就任 |
1923(大正12)年9月7日 | 正副総裁、大蔵省銀行局長や主要銀行代表者と金融機関復旧問題について協議 |
1923(大正12)年9月7日 | ニューヨーク代理店監督役に対し、大震災の報により預金払戻しや借入金返済を追られ資金難に陥った為替銀行の救済のため、横浜正金銀行へ政府または本行の在外資金を払下げるよう訓電 |
1923(大正12)年9月8日 | 銀行から応急資金の要請があれば、非取引先であっても信用度に応じ直接特別融通してもよいこととする |
1923(大正12)年9月9日 | 指定外倉庫保管商品担保貸出あるいは臨時指定倉庫の取扱いを行うなど商品担保融通を弾力化 |
1923(大正12)年9月10日 | 国債市場閉鎖中のため公共団体等から国債を買入れ(11月27日まで) |
1923(大正12)年9月11日 | 木村副総裁、災害に対処して本行がとるべき方針につき声明(12日新聞発表) |
1923(大正12)年9月11日 | 三菱・日本興業両行を通ずる東京市への特別融通を承諾(限度480万円) |
1923(大正12)年9月11日 | 救恤資金下賜により内蔵頭名義の臨時当座預金開設 |
1923(大正12)年9月15日 | 各支店に適用利率の緩和措置を通知 |
1923(大正12)年9月15日 | 第五十九銀行(青森)に対して、青森県が政府のために買上げる応急物資代金の特別融通を承認 |
1923(大正12)年9月18日 | 本行主催により、東京銀行集会所において東西金融疎通対策を協議(席上、震災前振出の京浜地区向け手形の実態調査を依頼) |
1923(大正12)年9月22日 | 生命保険会社に対する保険金支払資金特別融通を承認 |
1923(大正12)年9月23日 | 生糸荷為替資金特別融通を開始 |
1923(大正12)年9月26日 | 総裁、シンジケート銀行団幹事を招き支払猶予令撤廃後融資弾力化の方法につき説明 |
1923(大正12)年9月27日 | 日本銀行の手形の割引に因る損失の補償に関する財政上必要処分の件(勅令)公布施行(いわゆる震災手形割引損失補償令、限度1億円) |
1923(大正12)年9月28日 | 上記補償令による特別融通開始(新規持込み締切り期限13年3月末) |
1923(大正12)年9月28日 | 大正13年3月末までの措置として高率適用の停止、担保掛目の引上げを決める |
1923(大正12)年9月29日 | 副総裁、本行の融資方針につき第2次声明を発表 |
1923(大正12)年9月29日 | 日本勧業銀行に対する同行の不動産担保融資資金供与に関し、登記未了等により同行の融資実行前であっても必要により本行が前貸金融通を行うこととする |
1923(大正12)年10月13日 | 政府から正式に震災手形割引損失補償令に基づく割引実行命令書を受ける(割引歩合日歩2銭4厘、別口割引手形と称す) |
1923(大正12)年10月24日 | 日本興業銀行に対し国債市場再開後の所要資金の特別融通を承認 |
1923(大正12)年11月1日 | 社債償還資金調達難の事業会社へ日本興業銀行を通じ特別融通開始(実行額3350万円) |
1923(大正12)年11月7日 | 日本興業銀行に対し証券市場復興資金を特別融通(687万円) |
1923(大正12)年11月8日 | 兌換銀行券(甲)200円券の急造につき認可(震災による印刷局工場焼失のため同局下請民間印刷所に発注したが結局発行せず15年4月廃棄) |
1923(大正12)年12月31日 | 震災後年末までの本行融通額(震災手形の再割引を除く)は8億1000万円強に上る |
1924(大正13)年3月31日 | 震災手形の新規割引締切り期限(割引累計額4億3100万円弱) |
1924(大正13)年4月1日 | 震災後の臨機処置の整理、常態復帰に着手(貸出標準、担保の取扱い等) |
1924(大正13)年12月22日 | 震災手形割引歩合日歩2厘引下げ(2銭2厘) |
索引にあらわれた「関東大震災」関連事項 (事項索引より)
項目 | ページ |
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関東大震災 | |
― 時と大正9年反動時との日銀施策の相違点 | III・85〜86 |
― 直後の日銀の営業 | III・62〜63 |
― と金解禁との関係 | III・144〜145;160;166 |
― と財界整理 | III・103 |
― に対する日銀の態度 | III・196 |
― に対する日銀の方針 | III・63〜64 |
― に伴う支払延期令施行に関する蔵相声明 | III・59 |
― による焼損貨幣・紙幣の取扱い | III・73 |
― による朝鮮銀行の整理中断 | III・42 |
― の金融界への影響 | III・144〜145;160;184;187;189;242;287;363 |
― の地方金融界への影響 | III・54〜56 |
― の発生・被害 | III・48〜49 |
震災手形割引損失補償令の公布(大正12年) | III・59〜60;87 |
関東大震災時の措置 | |
貸出金利適用方針の緩和 | III・65〜66 |
為替銀行に対する在外正貨売却 | III・63;82〜84 |
生糸荷為替資金の融通 | III・79 |
基本方針 | III・63〜64 |
国債の買入れ | III・72 |
支援声明 | III・54 |
指定外倉庫保管商品担保貸出・準指定倉庫の取扱い | III・68;79 |
社債償還資金等の融通 | III・82 |
証券市場復興資金の融通 | III・80 |
焼損貨幣・紙幣の引換え | III・73 |
成規外担保の受入れ | III・67 |
生命保険金支払資金の融通 | III・80〜81 |
第1次声明(日銀) | III・63;68 |
第2次声明(日銀) | III・64;66 |
担保価格の引上げ | III・66〜67;75;79 |
特殊資金の融通 | III・77〜84 |
取引先外銀行に対する融通 | III・68〜72;74;76 |
不動産金融に対する援助 | III・77〜78 |
モラトリアム | V・41 |
「社史紹介」へのリンク
- 社史紹介「に」
〔渋沢栄一記念財団 実業史研究情報センター / 社史プロジェクト〕
http://www.shibusawa.or.jp/center/shashi/shasi_na.html#02