書誌事項
渋沢栄一翁 / 白石喜太郎著
東京 : 刀江書院, 1933.12
5, 9, 19, 990, 11p, 図版14枚 ; 23cm
注記: 装丁: 渋沢秀雄 ; 奥付の発行者: 尾高豊作 ; 表紙は布製で柏の絵入り ; 見返しに稲穂の絵(秀雄の印あり)
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解題
1914年(大正3)より渋沢栄一の秘書役を務めた白石喜太郎(しらいし・きたろう、1888-1945)執筆の栄一伝記。数ある栄一の伝記は生誕から大蔵省退官までが主体であるのに対し、本書はそれ以降他界に至るまでの後半生も詳述している点が特徴。また『青淵先生六十年史』(竜門社、1900)が栄一の関わった事業中心の記述であったのに対し、本書は側近の立場から見た「人間渋沢」に焦点をあててまとめたもの。栄一の生涯を季節に例えて、冬、春、夏、初秋、仲秋、晩秋の6篇に分けている。各篇は同時代の主要事項で細分し、さらにその下に出来事や企業・団体名を項目としてたてている。巻末に11ページに渡る栄一年譜を付す。
巻頭の「序に代へて」によると、本書は「どうせ書いてくれるなら [中略] 英雄豪傑でもなければ偉人でもない、唯の渋沢を其の儘に書いて貰ひたい」との栄一の述懐に触れた白石が、1929年(昭和4)秋より書き始めたもの。翌年春から月刊誌『経済知識』に「人間渋沢栄一」と題して和泉清のペンネームで連載が開始された。栄一はこれを読み白石の執筆であることを知ると、時に赤を入れながら連載を楽しんでいた。1931年(昭和6)11月に栄一が没してしばし筆が絶たれたが、渋沢敬三らの励ましで翌年1月より執筆を再開。1933年(昭和8)10月まで連載した前半生部分に編集の手を加え、別途執筆した後半生部分を併せて単行本として出版する運びとなった。書名を『渋沢栄一翁』とし、敬三が序文を寄せ、渋沢秀雄が装丁を担当。更に青淵先生伝記資料編纂主任の幸田成友(こうだ・しげとも、1873-1954)による校閲がなされた。
なお、『渋沢栄一伝記資料』別巻第4の「宛名人名簿」には、白石の経歴が以下のように紹介されている。
土佐に生る。明治四三年東京高等商業卒。第一銀行に入り、大正三年以後渋沢事務所に転出。明治二一年(一八八八) - 昭和二〇年(一九四五)
『渋沢栄一伝記資料』別巻第4 p.612掲載
目次(抜粋)
項目 | ページ | 『経済知識』掲載の巻(号) | |
---|---|---|---|
[栄一肖像写真] | 巻頭 | ||
[栄一の書] | 巻頭 | ||
序 / 渋沢敬三 | 1 | ||
序に代へて / 白石喜太郎 | 1 | ||
目次 | 1 | ||
[栄一肖像写真]仏蘭西時代、大蔵省租税正時代、壮年時代 | |||
第1篇 『冬』 | 1、前記 | 1 | 3(2) |
2、少年時代 | 2 | 3(2) | |
3、志士時代 | 10 | 3(3〜4) | |
4、一橋藩時代 | 22 | 3(4〜6)、4(1〜2) | |
5、幕府時代 | 53 | 4(2) | |
6、身辺 | 61 | 4(3〜4) | |
7、仏蘭西時代 | 71 | 4(4、6)、5(2〜5) | |
8、静岡時代 | 125 | 5(5)、6(1、3) | |
9、大蔵省時代 | 140 | 6(3〜6)、7(1、6)、8(3、5、6)、9(1〜4) | |
第2篇 『春』 | 1、実業的活動の総本部 | 245 | 9(5)、10(3) |
2、社会人としての活躍の基礎 | 261 | 10(4) | |
3、実業界の基礎工事 | 271 | ||
4、社会人としての活動 | 398 | ||
5、家庭 | 420 | ||
6、危難 | 431 | ||
第3篇 『夏』 | 1、朝鮮開発 | 439 | |
2、授爵の恩命 | 455 | ||
3、政治界入の勧誘 | 458 | ||
4、金本位制の実施 | 463 | ||
5、欧米旅行 | 467 | ||
6、東京高等商業学校 | 487 | ||
7、公爵徳川慶喜 | 496 | ||
8、大患 | 502 | ||
第4篇 『初秋』 | 1、転機 | 507 | |
2、渡米実業団 | 514 | ||
3、除外例 | 532 | ||
4、農業と牧畜 | 547 | ||
5、教育 | 556 | ||
6、社会事業 | 569 | ||
7、教化事業 | 579 | ||
8、漢学 | 591 | ||
9、対外関係 | 603 | ||
10、支那旅行 | 612 | ||
11、明治天皇大葬 | 622 | ||
12、明治神宮奉賛会 | 629 | ||
13、徳川慶喜逝く | 633 | ||
14、東北振興会 | 638 | ||
15、その面影 | 646 | ||
第5篇 『仲秋』 | 1、渋沢同族会社 | 661 | |
2、第一銀行支店の開廃 | 670 | ||
3、三度太平洋を越えて | 679 | ||
4、日米関係委員会 | 700 | ||
5、井上馨の死 | 708 | ||
6、実業界引退 | 719 | ||
7、理化学研究所 | 727 | ||
8、聖徳太子奉賛会 | 730 | ||
9、道路改良会 | 733 | ||
10、協調会 | 739 | ||
11、報效会 | 751 | ||
12、対外関係 | 755 | ||
13、陞爵 | 787 | ||
14、四度太平洋を渡りて | 790 | ||
15、生活改善の標本 | 801 | ||
16、大震災 | 806 | ||
17、子爵を凝視して | 823 | ||
第6篇 『晩秋』 | 1、排日移民法 | 833 | |
2、日仏会館 | 841 | ||
3、世話業 | 846 | ||
4、社会公共事業 | 873 | ||
5、対外関係 | 908 | ||
6、癩予防協会 | 927 | ||
7、救護法の実施 | 935 | ||
8、淋しさ増さる後姿 | 938 | ||
9、米寿祝賀会 | 945 | ||
10、栄誉 | 953 | ||
11、手術 | 961 | ||
12、永眠 | 968 | ||
13、葬儀 | 977 | ||
年譜略 | 1 |
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