書誌事項
昔夢会筆記 : 徳川慶喜公回想談 / 徳川慶喜 [談] ; 渋沢栄一編 ; 大久保利謙校訂
東京 : 平凡社, 1966.10
32, 362, 26p ; 18cm (東洋文庫 ; 76)
注記: 徳川慶喜の肖像あり
解題
渋沢栄一は1893年(明治26)頃から旧主・徳川慶喜(とくがわ・よしのぶ、1837-1913)の伝記編纂を企図し、編纂作業と並行して慶喜に取材する会を開催した。慶喜が昔夢会(せきむかい)と名付けたこの会は、兜町の渋沢事務所または飛鳥山の栄一邸に慶喜を迎え、1907年(明治40)から1913年(大正2)までに17回開催。更に稿本ができる都度慶喜の小日向邸に編纂員が出向き批正を仰ぐ会も、昔夢会と並行して8回行われた。毎回の昔夢会には栄一のほか伝記編纂主任の萩野由之ら編纂関係者が出席し、第1-4回の記録は編纂員が筆記した。第5-13回には速記者が同席し慶喜の言葉を記録したが、速記者の同席を慶喜が望まなかったため第14回以降は再び編纂員の筆記となった。栄一は、この計25回に渡る会の記録に第26回として昔夢会以前に江間政発が慶喜に取材した筆記を加え、上中下3巻の『昔夢会筆記』と題して1915年(大正4)限定25部刊行、編纂関係者に配布した。本書はこの3巻本を底本とし、活字を組み直し判型を小さくして出版したもの。なお校訂に際しては、『渋沢栄一伝記資料』第27巻と第47巻所収の「昔夢会筆記」を参考にしている。
筆記の内容は、毎回数項目から数十項目の質問事項について慶喜が語ったもの。質問は第17回までが計257項目、第18回以降が計40項目、合計297項目に及ぶ。項目の順は必ずしも時系列でなく、幼少時についてのものが後ろに出現することもある。速記者が同席した回は発言が逐語で記録されているが、それ以外の回は編纂員により編集されている。各回の冒頭に開催年月日、場所、出席者名の記載あり。
本書全体の構成は、まず巻頭に栄一による『徳川慶喜公伝』序文をのせ、次に第1-26回の「昔夢会筆記」が続く。その後に「本書の成り立ちと構成」「本書の読解に参照すべき主要な文献」「徳川慶喜と渋沢栄一」「本書の史料的価値」について、大久保利謙(おおくぼ・としあき、1900-1995)による詳細な解説を掲載。更に慶喜誕生から逝去までの関係略年表と、関係者250人余りの人名略伝を付している。
書影
左から初版(1915)上巻表紙、平凡社版(1966)表紙、同標題紙
目次
項目 | ページ |
---|---|
凡例 | 1 |
昔夢会筆記 例言 / 渋沢栄一 | 3 |
目次 | 5 |
徳川慶喜公伝 自序 / 渋沢栄一述 | 17 |
昔夢会筆記 : 徳川慶喜公回想談 | 1 |
徳川慶喜公[肖像写真] | 2 |
第一 明治四十年七月二十三日兜町事務所において | 3 |
第二 明治四十二年三月二十日兜町事務所において | 22 |
第三 明治四十二年五月六日飛鳥山邸において | 31 |
第四 明治四十二年六月八日兜町事務所において | 34 |
第五 明治四十二年七月十五日兜町事務所において | 42 |
第六 明治四十二年十月十一日兜町事務所において | 80 |
第七 明治四十二年十二月八日兜町事務所において | 91 |
第八 明治四十三年一月二十五日兜町事務所において | 112 |
第九 明治四十三年五月七日飛鳥山邸において | 151 |
第十 明治四十三年七月十九日兜町事務所において | 176 |
第十一 明治四十三年十月十八日兜町事務所において | 200 |
第十二 明治四十四年四月六日兜町事務所において | 227 |
第十三 明治四十四年六月十四日兜町事務所において | 246 |
第十四 明治四十四年十一月九日飛鳥山邸において | 268 |
第十五 明治四十五年五月十五日飛鳥山邸において | 278 |
第十六 大正元年十一月九日飛鳥山邸において | 286 |
第十七 大正二年五月三日飛鳥山邸において | 293 |
第十八 明治四十三年六月十二日小日向公爵邸において | 295 |
第十九 明治四十三年七月十二日小日向公爵邸において | 300 |
第二十 明治四十三年七月十六日小日向公爵邸において | 301 |
第二十一 明治四十三年八月八日小日向公爵邸において | 304 |
第二十二 明治四十四年三月一日小日向公爵邸において | 307 |
第二十三 明治四十四年六月二十九日小日向公爵邸において | 310 |
第二十四 大正元年九月二十六日小日向公爵邸において | 312 |
第二十五 大正二年九月九日小日向公爵邸において | 315 |
第二十六 昔夢会以前巣鴨・小日向公爵邸において | 319 |
解説 / 大久保利謙 | 325 |
昔夢会筆記 上巻[表紙写真] | 346 |
徳川慶喜関係略年表 | 347 |
人名略伝 | 巻末 |
昔夢会出席者一覧(よみ、生没年)<肩書>(関係)【徳川慶喜公伝編纂における役割】
慶喜側の出席者
- 徳川慶喜(とくがわ・よしのぶ、1837-1913)【被伝者】
- 新村猛雄(しんむら・たけお、1839?-1908)(一橋家御側用人)
- 豊崎信(とよさき・しん?、?-?)(慶喜の家令)
- 三島毅(みしま・つよし、1830-1919)<文学博士>
- 猪飼正為(いがい・まさため、1834?-1919)(一橋家御側用人)
- 稲葉正縄(いなば・まさなお、1867-1919)<子爵>
- 徳川慶久(とくがわ・よしひさ、1884-1922)<公爵>(慶喜七男)
- 柴太一郎(しば・たいちろう、1839-1923)(会津藩士)
編纂側の出席者
- 渋沢栄一(しぶさわ・えいいち、1840-1931)<男爵>【著者】
- 渋沢篤二(しぶさわ・とくじ、1872-1932)(栄一長男)
- 穂積陳重(ほづみ・のぶしげ、1855-1926)<法学博士>【顧問】
- 阪谷芳郎(さかたに・よしろう、1863-1941)<法学博士、男爵>【顧問】
- 三上参次(みかみ・さんじ、1865-1939)<文学博士>【監修者】
- 萩野由之(はぎの・よしゆき、1860-1924)<文学博士>【監修者、編纂主任】
- 小林庄次郎(こばやし・しょうじろう、1877-1909)【起草者】
- 江間政発(えま・せいはつ、1852-1916)【編纂員】
- 渡辺轍(わたなべ・てつ?、?-1941)【編纂員】
- 高田利吉(たかだ・りきち、?-1939)【編纂員】
- 藤井甚太郎(ふじい・じんたろう、1883-1958)【編纂員】
- 井野辺茂雄(いのべ・しげお、1877-1954)【編纂員】
『昔夢会筆記』に記載されている出席者の一覧 (PDF)
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外部機関の所蔵データほか
NDL-OPAC / CiNii Books / Worldcat / NDL Search / Webcat Plus / Googleブックス 1,2
参考リンク
- 徳川慶喜公伝編纂 付.昔夢会 - 64.編纂・刊行:渋沢栄一伝記資料第58巻事業別年譜より
〔『渋沢栄一伝記資料』|渋沢栄一|公益財団法人渋沢栄一記念財団〕
http://www.shibusawa.or.jp/SH/denkijigyo/np064.html#J-0999 - [今日の栄一] 1907(明治40)年7月23日 (67歳) 第一回「昔夢会」開催 【『渋沢栄一伝記資料』第27巻掲載】
〔実業史研究情報センター・ブログ「情報の扉の、そのまた向こう」 - 2008年7月23日〕
http://d.hatena.ne.jp/tobira/20080723/1216777785 - [今日の栄一] 1909(明治42)年6月8日(火) (69歳) 渋沢栄一、徳川慶喜の口述筆記会「昔夢会」に出席 【『渋沢栄一伝記資料』第47巻掲載】
〔実業史研究情報センター・ブログ「情報の扉の、そのまた向こう」 - 2009年6月8日〕
http://d.hatena.ne.jp/tobira/20090608/1244424780