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公益財団法人渋沢栄一記念財団情報資源センターがお送りするブログです。
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 ヴァンダァリップ著『欧洲の将来』 【竜門社,1922】

書誌事項

欧洲の将来 / フランク・エ・ヴァンダァリップ著 ; 竜門社訳
 東京 : 竜門社, 1922.08
 4, 5, 2, 346p ; 20cm
 注記: 原タイトル: What next in Europe? ; 参照タイトル: 欧州の将来 ; 原著者: Frank Arthur Vanderlip ; 監修: 小林丑三郎 ; 翻訳: 弓家七郎

本文を読む

解題

 渋沢栄一は数回の渡米で米国の実業家ヴァンダーリップ(Frank Arthur Vanderlip, 1864-1937)と親交を結び、その著書"What next in Europe?"を日本語に翻訳させ、自ら序文を書き『欧洲の将来』として竜門社から刊行した。ヴァンダーリップは米国財務官僚から実業界に転身し、ナショナル・シティ・バンク頭取などを歴任した米国実業界の重鎮で、1920年(大正9)には日米有志協議会の団長として来日し、栄一を始めとした実業家や政府関係者らと交流している。
 1921年の訪欧で4か月にわたり15か国を歴訪したヴァンダーリップは、第一次大戦後のヨーロッパの実情を米国人に知らせるために本書を著した。自序に続く本文は3篇からなり、第1篇「欧洲問題の背景」では、各地で会談した元首や閣僚、実業家、労働者代表などとの対話と視察から、ヨーロッパの経済社会状況とその背景について記述。第2篇「経済的混乱」では、ドイツ、英国、フランス、イタリア、オーストリア、ロシア、ブルガリアの国々を取り上げ、各国別に経済状況と各国民の直面している難関をまとめている。第3篇「欧洲の再建設」では国際連盟の事業や米国の役割など、ヨーロッパを救済する各国の努力に触れている。
[栄一の序文は『渋沢栄一伝記資料』第48巻p37-38に再録]

書影

はゝその落葉

目次

項目ページ
序 / 渋沢栄一1
原序1
目次1
欧洲の将来1
  第1篇 欧洲問題の背景1
    第1章 吾人の欧洲観1
    第2章 経済的原則に照せる結論15
    第3章 貿易の均衡と予算36
    第4章 通貨の膨脹52
    第5章 巴里の悪条約71
  第2篇 経済的混乱97
    第6章 独逸及其の賠償金97
    第7章 英国127
    第8章 仏蘭西144
    第9章 伊太利162
    第10章 墺太利及継承諸国176
    第11章 露西亜及近東諸国193
    第12章 勃牙利問題216
  第3篇 欧洲の再建設229
    第13章 国際聯盟の影響231
    第14章 労働者の態度250
    第15章 交換機関の恢復266
    第16章 聯合国の対米負債287
    第17章 償還と経済的復興306
    第18章 米国の責任331

渋沢栄一とヴァンダーリップとの交流(序文より編集)

西暦和暦交流内容
1902明治35栄一渡米、ヴァンダーリップと会見
1909明治42栄一渡米、ヴァンダーリップと会見
1915大正4栄一渡米、ヴァンダーリップと会見
1920大正94月ヴァンダーリップ、日米有志協議会団長として来日、夫人令嬢と渋沢家三田綱町邸に滞在
1921大正108月〜11月ヴァンダーリップ、ヨーロッパ15か国歴訪
10月栄一渡米、11月27日ヴァンダーリップと会見、著作翻訳について懇談
1922大正111月栄一帰国、著作入手、8月翻訳出版

参考リンク