情報資源センター・ブログ

情報の扉の、そのまた向こう

公益財団法人渋沢栄一記念財団情報資源センターがお送りするブログです。
渋沢栄一、社史を始めとする実業史、アーカイブズや図書館に関連する情報をご紹介しています。

 「クロアチアのMuseum Documentation Center (MDC)」 (5) MDCのアーカイヴ

 Museum Documentation Center(MDC)ウェブサイトのアーカイヴのページには、「クロアチアの博物館とギャラリーのアーカイヴ」「MDC人物アーカイヴ」「内戦アーカイヴ」の3つが記載されています。

クロアチアの博物館とギャラリーのアーカイヴ (Archive of museums and galleries in Croatia)

 まず1つ目は、クロアチア共和国の全博物館の歴史的発展に関するアーカイヴです。主な内容は次の通りです。

  • 個々の博物館やギャラリーの業務プログラム
  • 国内外の同様の機関および自館のコミュニティとの連携に関する文書
  • 博物館の新しい展示
  • 在庫調査における問題への対処
  • 博物館収蔵品の保全などの記録文書
  • 展示デザインの青写真
  • 出版事業記録
  • 建物に関する情報
  • 新しいサイトへの移動
  • 各機関の全ての公的活動の記録

MDC人物アーカイヴ (The MDC Personnel Archive)

 2番目の人物アーカイヴは、国内の著名な博物館員の活動関連情報を保持するために、「クロアチアの博物館とギャラリーのアーカイヴ」の一部門として2002年初頭に開設されました。人物情報を収集することで、クロアチアの文化史に貢献し、次世代のための研究を促進し、将来の博物館出版物のための材料を作成しています。人物アーカイヴの情報は次のデータベースから検索することができます。

クロアチアの著名な博物館員の情報アーカイヴ

 この「博物館員情報アーカイヴ」データベースには、クロアチアの文化史を豊かにした著名な博物館員と美術史家の情報が収録されています。収録データからは「MDC図書館蔵書目録」および後述するオンラインの「MDCクロアチア博物館名鑑」にリンクしています。そしてこのアーカイヴの情報は現在と未来の博物館員の研究活動に役立ち、博物館員についての書誌の作成を容易にし、ラジオやテレビのドキュメンタリー番組制作にも活用されました。
 採録データと検索キー(Find a curator)は次の通りです。

    • 採録データ : 人名、学習分野、学位、専門職位、業務分野、専門分野、所属機関(→MDC博物館名鑑へリンク)、略歴、文献目録(→MDC図書館目録へリンク)、写真、インタビュー録音音声
    • 検索キー(Find a curator) : 人名、所属機関、業務分野

 検索キーの中の「業務分野(Field of work)」の選択肢を見ると、「archaeology」「ethnology」「history」といったいわゆる博物館の専門分野に加え、「documentalist」「librarianship」という分野もはいっていて、MDCのとらえる博物館専門家の範囲がよくわかります。「業務分野」を「documentalist」で検索した結果をひとつあげておきます。インタビューの録音も1分程度ですがはいっていて、専門家の肉声を聞くことができます。

    • 検索例 : 「Ivana Vrbanić-Fadjejev」氏のデータ

Ivana Vrbanić-Fadjejev
http://www.mdc.hr/en/mdc/archive/the-personal-information-archive-of-croatian-distinguished-curators/?muzealacId=75

内戦アーカイヴ (The Homeland War Archive)

 3番目のアーカイヴは、旧ユーゴスラビアの内戦(祖国戦争、1991-1995)に関連したもので、内容は次の通りです。

  • 占領地の博物館とギャラリー機関に関する情報
  • 博物館とギャラリー収蔵品の戦争期の状態
  • 収蔵品を保護するためにとられた国際条約による対策の記録
  • 文化財盗難記録
  • 博物館の建物と資料に対する戦争被害に関するMDC、ICOM欧州評議会ユネスコの共同調査報告

 報告書のファイルを一つ見せていただきましたが、博物館ごとに収蔵品の被災状況が詳しく記載されていました。

 なおMDCは終戦直後の1997年に、『クロアチアの博物館とギャラリーの戦争被害』(War Damage to Museums and Galleries in Croatia)という書籍を刊行しています。(「出版物」のページ参照)