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 渋沢栄一著『実験論語処世談』 【実業之世界社,1922.12】

書誌事項

実験論語処世談 / 渋沢栄一
 東京 : 実業之世界社, 1922.12
 2, 22, 858p ; 23cm
 注記: 折込図1枚

解題

 渋沢栄一は人生の指針としていた論語について、折に触れて語っていた。実業之世界社社長野依秀一(のより・ひでいち、1885-1968)はこれを世に広めようと論語に関する栄一の談話を取材し、1915年から1924年(大正4-13)にかけて雑誌『実業之世界』に133回連載した。『渋沢栄一伝記資料』には栄一の日記からの引用として、実業之世界社の記者が栄一の談話を取材に何回も訪れたことが記されている。本書はその連載の109回までをまとめ、栄一の校閲を経て中村不折(なかむら・ふせつ、1866-1943)の装丁で刊行したもの。
 本書巻頭には論語からとられた栄一の題字「己所不欲勿施於人」(己れの欲せざる所は人に施すこと勿れ)が置かれ、本文には連載の中からおおむね論語の章句順に記事が収められている。内容は論語章句と読み下し文、そして栄一の語り口で解説とそれにまつわる処世談がつづられている。論語の登場人物を始め歴史上の人物や同時代人など多くの人々に触れており、関わった事業にまつわるエピソードも含まれ、論語を媒介に栄一の人生観が浮かび上がる著作になっている。
 刊行の翌年に起きた関東大震災で本書の紙型が失われ絶版となったが、1928年(昭和3)に野依は新たに版を組み、より広く読まれるよう『処世の大道』と改題し、判型を小さくして価格を下げ実業之世界社から刊行した。巻頭の栄一題字には論語から「徳不弧必有隣」(徳は弧ならず必ず隣有り)がとられている。
 なお本書の初出が『実業之世界』連載中に、大半の記事が『竜門雑誌』に転載された。これは後に『渋沢栄一伝記資料』別巻第6及び第7に全編が収録された。

書影

『実験論語処世談』

デジタル版『渋沢栄一伝記資料』関連綱文

外部機関の所蔵データほか

NDL-OPAC / CiNii Books / Worldcat / NDL Search 1,2,3 / Webcat Plus / Googleブックス 1,2

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参考リンク