書誌事項
官民を超えた渋沢栄一の福祉実践 : 欧米からの知と前近代からの継承 / 兼田麗子編著
京都 : ミネルヴァ書房, 2024.11
xiii, 189, 4p ; 22cm (渋沢栄一と「フィランソロピー」. 4)
注記: シリーズ責任編集: 見城悌治, 飯森明子, 井上潤 ; ISBN: 9784623097609
解題
渋沢栄一の多方面にわたる「フィランソロピー」活動を分析し、その思想を重層的に考察するシリーズ「渋沢栄一と「フィランソロピー」」の7作目。今回の第4巻では、渋沢が公益の追求の一環として捉え自らも深く関わった社会福祉について、必要に応じ「官」と「民」を使い分け、継続的な運営形態を構築したその福祉実践を多面的に考察。渋沢に影響を与えた英仏の社会福祉・慈善活動、アメリカのフィランソロピストとの交流等の分析、日本の前近代から継承されてきた福祉の考え方や実践との比較・検討等をおこなっている。
書影
目次
項目 | ページ |
---|---|
シリーズ出版『渋沢栄一と「フィランソロピー」』(全八巻)刊行にあたって | i |
はしがき | iii |
目次 | [vii] |
凡例 | xiii |
序章 渋沢栄一ならではの福祉実践とは何か / 兼田麗子 | 1 |
一 本書の問題意識 | 1 |
二 渋沢の福祉実践の源・糧となったもの | 3 |
三 渋沢の福祉実践を考察する意義 | 10 |
第I部 渋沢栄一に影響を与えた英仏の社会福祉・慈善活動 | [13] |
第一章 渋沢栄一はいかに慈善思想の特徴を形成したか : イギリス人ラウントリーの多様な救済事業を通じて / 岡村東洋光 | 15 |
一 渋沢にとっての慈善の出発点 | 15 |
二 穂積陳重「欧羅巴慈善情報」がもたらした大規模慈善活動への驚き | 16 |
三 一九〇二年の欧米訪問文明国の慈善と有料方式の発見 | 17 |
四 田中太郎「泰西社会事業視察一斑」が伝えたイギリスの多様な救済事業 | 20 |
五 同時代の企業家ジョーゼフ・ラウントリーの三トラスト : 社会の様相を変える民間の自発的公益活動 | 23 |
六 実費診療所にみる渋沢の到達点 : 慈善から社会事業へ | 27 |
第二章 ウェッブ夫妻の眼差しの奥に潜む「歴史」 : 近代イギリスのフィランソロピーの一断面 / 坂下史 | 35 |
一 東京養育院とロンドンの捨て子養育院 | 35 |
二 渋沢とウェッブ夫妻の出会い : 一致しなかった意図と関心 | 36 |
三 イギリス近代史のなかの福祉ボランタリズムと国家 | 43 |
四 イギリスのフィランソロピストたちの活動と困難 : ロンドンの捨て子養育院をめぐって | 47 |
五 渋沢とウェッブ夫妻のいくばくかの重なり | 53 |
第三章 渋沢栄一と第二帝政期のパリにおける社会福祉 / 岡部造史 | 60 |
一 若き渋沢がパリで体験した「異文化」 | 60 |
二 第二帝政期のパリの姿 | 62 |
三 集権的で多種多様な社会福祉事業 | 64 |
四 「公」と「民」の境界を越えた担い手と寄付の増加 | 70 |
コラム1 養育院の黎明期におけると大久保一翁と渋沢栄一 / 稲松孝思 | 77 |
コラム2 「航西日記』にみる社会福祉・慈善事業 / 関根仁 | 81 |
第II部 渋沢栄一がみたアメリカのフィランソロピーとフィランソロピスト | [87] |
第四章 アメリカにおけるフィランソロピーの歴史と渋沢栄一 / キャサリン・バダチャー (Katherine Badertschrer), ドゥワイト・バーリンゲイム (Dwight Burlingame) (翻訳・兼田麗子) | 89 |
一 本章における問題意識 | 89 |
二 フィランソロピーの萌芽 : 「市民の熱意と宗教的情熱の高まり」(南北戦争以前) | 91 |
三 変質するフィランソロピー : 科学として、ビジネスとして(一九世紀半ばから二〇世紀初頭) | 94 |
四 アメリカを代表する三人のフィランソロピスト | 100 |
五 『論語』の「忠恕」を欧米の「愛」になぞらえた渋沢 | 104 |
第五章 社会事業家としての渋沢栄一 : 四度にわたる訪米とフィランソロピストとの交流 / 渋沢田鶴子, 渋沢雅英 | 110 |
一 「民による民のための社会事業」への開眼 | 110 |
二 初めての訪米で受けた感銘 | 111 |
三 プログレッシブ(革新主義)時代のアメリカ : フィランソロピーが果たした重要な役割 | 115 |
四 渋沢とフィランソロピストの親交 | 119 |
第III部 近代日本における先駆的な福祉実践 : 前近代からの継承と模索 | [133] |
第六章 渋沢栄一と慈善・社会事業 : 真の公益とは / 山本浩史 | 135 |
一 慈善・社会事業における背景と道徳観 | 135 |
二 中央慈善協会設立に対する渋沢の思い | 138 |
三 恩賜財団済生会と「忠恕一貫」の思想 | 142 |
四 全日本方面委員連盟設立に向けて | 151 |
五 慈善・社会事業との出会いの意味 | 153 |
第七章 大原孫三郎との比較にみる渋沢栄一の福祉実践 : 「鳥の目」と「虫の目」 / 兼田麗子 | 158 |
一 福祉実践の先駆者・渋沢栄一と大原孫三郎 | 158 |
二 渋沢と大原の共通点 : 共存共栄のより善い社会をめざして | 161 |
三 渋沢と大原の相違点 : 「鳥の目」と「虫の目」 | 171 |
四 両者の福祉実践が現代に投げかけるもの | 175 |
コラム3 感恩講 : 民間福祉事業の先駆的存在 / 木村昌人 | 180 |
コラム4 備前・閑谷学校をめぐる人々と福祉事業 / 町泉寿郎 | 185 |
人名索引 | 1 |
事項索引 | 3 |
執筆者紹介 | 巻末 |
責任編集者紹介 | 巻末 |
参考リンク
- 官民を超えた渋沢栄一の福祉実践
〔ミネルヴァ書房〕
https://www.minervashobo.co.jp/book/b653242.html - シリーズ出版企画『渋沢栄一と「フィランソロピー」』|研究センターだより
〔研究センター|公益財団法人 渋沢栄一記念財団〕
https://www.shibusawa.or.jp/research/newsletter/post_6.html
「渋沢栄一と「フィランソロピー」」シリーズ一覧
- 渋沢栄一は漢学とどう関わったか / 町泉寿郎編著 [既刊]
- 帰一協会の挑戦と渋沢栄一 / 見城悌治編著 [既刊]
- 渋沢栄一が目指した「地域」の持続的成長 / 松本和明編著 [既刊]
- 日米欧の福祉社会づくりと渋沢栄一 / 兼田麗子編著
- 国際交流に託した渋沢栄一の望み / 飯森明子編著 [既刊]
- 社会を支える「民」の育成と渋沢栄一 / 見城悌治編著 [既刊]
- 渋沢栄一はなぜ「宗教」を支援したのか / 山口輝臣編著 [既刊]
- 渋沢栄一による文化の継承と創造 / 井上潤編著
(本書巻末より転載)