情報資源センター・ブログ

情報の扉の、そのまた向こう

公益財団法人渋沢栄一記念財団情報資源センターがお送りするブログです。
渋沢栄一、社史を始めとする実業史、アーカイブズや図書館に関連する情報をご紹介しています。

 1877(明治10)年11月5日 (37歳) 演説「銀行者ハ殖産ニ注意セザルベカラザルノ説」 【『渋沢栄一伝記資料』第5巻掲載】

是日、栄一木挽町第十五国立銀行に於て開かれたる択善会第五回の会同に出席し「銀行者ハ殖産ニ注意セザルベカラザルノ説」と題して一場の演説をなす。

出典:『渋沢栄一伝記資料』 2編 実業界指導並ニ社会公共事業尽力時代 明治六年−四十二年 / 1部 実業・経済 / 1章 金融 / 1節 銀行 / 6款 択善会・東京銀行集会所 【第5巻 p.449-452】
・『渋沢栄一伝記資料』第5巻目次詳細
http://www.shibusawa.or.jp/SH/denki/05.html

渋沢栄一伝記資料』第5巻p.450-451には、渋沢栄一の演説「銀行者ハ殖産ニ注意セザルベカラザルノ説」が「松方家文書 第二号之三七」からの転載として紹介されています。
この文の中で栄一は「銀行家は産業育成を心がけるべき。銀行が自分たちの安全ばかりを考えて産業を育成する視点を持たなければ『銀行』自体の存続は期待できない」と自らの考えを述べ、最後に「私たち同業者は貸付をするときに抵当の確実さだけではなく、人物や事業のよしあしを考えて、それらが確実であったら低い利息で信用貸付をして事業を後押しし、経済に害を為すものがあればそれを防ぐ。こうして産業育成に役立つよう心がけたいものである。それでこそ本来の銀行業の役割に恥ずかしくない状態であると言えるのではないかと思う。皆さんはどう思いますか?」と同業者に対する問いかけで結んでいます。

[前略] 故ニ我同業者タルモノハ奮テ故習弊格ヲ掃ヒ、其貸付ヲ為スニ於テ人ト物トノ如何ヲ問ハスシテ特リ抵当ノ確実ナルニ拘泥スルナク、能ク精神ヲ考察ニ注キ、而シテ商估ノ情態ヲ活眼ニ照ラシ若シ其正経ノ目途ニシテ処行確実ナルモノアレハ勉メテ抵(低)利信貸ノ款ヲ定メテ之カ事業ヲ賛成シ、其或ハ経済ニ於テ害スルモノアレハ必ス之ヲ防絶シ、此ヲ以テ殖産興業ノ効アラン事ヲ企図スヘシ、斯ノ如キ事ヲ得ハ則各自其本分ノ職ヲ尽シテ我業ヲ辱シメサルモノト云可キカ敢テ鄙見ヲ陳シテ以テ高諭ニ質ス、諸君以テ如何ト為ス
(『渋沢栄一伝記資料』第5巻p.451)

参考:中島哲也渋沢栄一の職分思想―日本資本主義創成期のエートス―」
〔法政大学学術機関リポジトリ
http://rose.lib.hosei.ac.jp/dspace/handle/10114/1660