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情報の扉の、そのまた向こう

公益財団法人渋沢栄一記念財団情報資源センターがお送りするブログです。
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 1911(明治44)年12月15日 (71歳) 在米日本人会からの依頼 【『渋沢栄一伝記資料』第33巻掲載】

是より先十一月十四日、当会は、アメリカ合衆国各地日本人会代表者の決議に依り、外務大臣子爵内田康哉に対し、帰国者の再渡航他四項の請願をなし、同時に栄一及び島田三郎に対して、右請願の目的を貫徹し得るやう当局との交渉を依頼す。是日栄一、内田外務大臣を訪問して右に関する意見を述ぶ。翌四十五年一月外務省は右に対する返答を日本人会に伝達す。

出典:『渋沢栄一伝記資料』 3編 社会公共事業尽瘁並ニ実業界後援時代 明治四十二年−昭和六年 / 1部 社会公共事業 / 3章 国際親善 / 2節 米国加州日本移民排斥問題 / 1款 在米日本人会 【第33巻 p.388-391】
・『渋沢栄一伝記資料』第33巻目次詳細
http://www.shibusawa.or.jp/SH/denki/33.html

カリフォルニアでの日本人排斥問題への対処として日米政府は1908(明治41)年に紳士協約を結び、日本からアメリカへの渡航制限がなされました。その状況を憂慮する在米日本人会は渋沢栄一らに政府との交渉を依頼、栄一はそれを受けて外務大臣を訪問しています。在米日本人会からの請願と政府からの回答は以下のようなものでした。
在米日本人会からの請願

  1. 帰国者の再渡航制限を帰国後1年以内から、3年以内に延長してほしい
  2. 農業経営者の兄弟および経営者の妻の兄弟を、共同経営者として渡航する許可を与えてほしい
  3. 相当の資格ある者の子女並に父母の呼寄せは、年齢で制限することなく、便宜を与えてほしい
  4. 移民・非移民の区別を廃止してほしい
  5. 相当の教育があり身体強壮・意思堅固で労働を厭わない者に対し、渡米の道を開いてほしい

政府からの回答

  • 一地方在留民の請願で対米方針を動かすことはできない
  • 請願事項中、既に外務省で実行しつつあるものもあるが、上記の4.と5.は不可能である
  • 上記1.については帰国後2年以内に、3.も父母妻子呼び寄せ簡便化を既に実行しているものの、総てに及んで実行させることができないのは遺憾とするところである

この請願文と回答文は、『渋沢栄一伝記資料』第33巻p.388-391に川島伊佐美著『http://opac.ndl.go.jp/recordid/000000766981/jpn:TITLE=日米外交史』(サンフランシスコ : 波多江実, 1932.02)からの転載として紹介されています。

参考:内田康哉(うちだ・やすや こうさい、1865-1936)
Yahoo!百科事典〕
http://100.yahoo.co.jp/detail/%E5%86%85%E7%94%B0%E5%BA%B7%E5%93%89/
内田康哉伝記草稿
〔外務省: 個人文書・書簡類〕
http://www.mofa.go.jp/Mofaj/annai/honsho/shiryo/shozo/senzen_3.html#2
内田康哉 肖像
〔LIFE: Time Covers - The 30S - Google
http://images.google.com/hosted/life/l?imgurl=b8e27d77a4049a3f
島田三郎(しまだ・さぶろう、1852-1923)
〔近代日本人の肖像 - 国立国会図書館
http://www.ndl.go.jp/portrait/datas/105.html