是日当協会、総理大臣山本権兵衛・文部大臣奥田義人・大蔵大臣高橋是清外各大臣及び次官等を生命保険協会に招待し、晩餐会を開く。栄一出席し、会長として当協会設立の趣旨を説述す。
出典:『渋沢栄一伝記資料』 3編 社会公共事業尽瘁並ニ実業界後援時代 明治四十二年−昭和六年 / 2部 実業・経済 / 7章 経済団体及ビ民間諸会 / 2節 其他ノ経済団体及ビ民間諸会 / 4款 日本実業協会 【第56巻 p.269-273】
・『渋沢栄一伝記資料』第56巻目次詳細
http://www.shibusawa.or.jp/SH/denki/56.html
日本実業協会は、「本邦の財政経済の将来に関し真摯なる研究調査を試み、其是とする所を実行する」ことを目的に郷誠之助(ごう・せいのすけ、1865-1942。実業家)らの発起によって1913(大正2)年10月に設立された団体で、渋沢栄一は推薦を受けて設立時より同会会長を務めています(『渋沢栄一伝記資料』第56巻p.268)。
設立から約2ヵ月後の12月22日、協会は内閣諸大臣および次官らを招いて午餐会を開催しました。午餐の後に栄一は挨拶に立ち、協会設立趣旨を「共同の力に依つて或は政治に、軍事に、宗教に、法律に説を述べ論を戦はすと云ふやうに進みたい」と述べ、さらに、大臣らを招いた事で実業家が権勢に近寄っていると疑われるかもしれないが、とした上で、財政・行政などの整理から実際的な調査について「意見を陳上する場合は、何れの方面に依つて発表するか、其施設は如何なる力に依つて世の中に現れるか、申上げます迄もなく今日尊臨を得た諸公の善政良法の御力に依らざるを得ぬ」のであるから、協会設立についてご理解・ご援助を願いたい、との意図を述べています。
『渋沢栄一伝記資料』第56巻p.270-273には午餐会での栄一の演説全文が『竜門雑誌』第310号(1914.03)からの転載として、またそれに対する総理大臣山本権兵衛の挨拶概要が『竜門雑誌』第308号(1914.01)からの転載として紹介されています。
参考:奥田義人(おくだ・よしと、1860-1917)
〔郷土の先人豆知識 奥田義人 - 鳥取県公式サイト〕
http://www.pref.tottori.lg.jp/dd.aspx?menuid=69240
高橋是清(たかはし・これきよ、1854-1936)
〔近代日本人の肖像 - 国立国会図書館〕
http://www.ndl.go.jp/portrait/datas/122.html