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 1909(明治42)年7月14日 米国側準備委員会、各地に通牒「国際貿易は平和の保障」

渡米実業団誌 同団残務整理委員編
  第一四−七二頁 明治四三年一〇月刊
七月十四日、米国側特別準備委員会は、本邦実業家が経由すべき米国各都市の商業会議所に宛て、左の通牒を発したり。右は能く我実業家の渡米に関する、米国側の準備と期待せる所とを表示するものにして且つ如何に米国実業家が、日米の親交を熱心希望せるやを証するに足るべき、有力なる文字なれば、茲に之を訳載す。
  接伴準備委員長ブレーン氏より、各地商業団体に宛てたる回文
 各位
拝啓、陳者将さに来らんとする日本実業家の団体が、我国に大旅行をなすに当つて、其時間を名所見物・晩餐・饗応・款待等のみに費す事も、勿論多少良好なる効果を生ずべしと雖も、斯くては我太平洋沿岸の各市が期待する所、又遂行せんとする所の、十が一にも当らず。
抑も国際の貿易は平和の保障にして、吾人の大いに考慮する所のものは、日米間の貿易の増進に外ならず。日本実業団は今回十五人の貿易専門家を同行すべし。日本帝国の貿易専門家は、世界何れの国の同業者に比しても、優るとも劣る所なき人士なり。
[中略] 若し此等の専門家がシヤトル市着の際、米国の専門家に会合し、大陸旅行中相互に懇親を結び、智識を交換するの機会を与へらるゝに於ては、米国の国産及製品に開し、有力なる研究を遂げんこと疑ひあるべからず。其結果は日本貿易の増進に帰すべし。
[中略]
一行シヤトル市に着せば、[米国の] 専門家連中は、直に分類部署を定め、各地の産物にして、日本の貿易に用ゆるに足るべき資料と思考さるゝものを、日本専門家に充分に説明し、価額其他必要なる資料を供給することを務め、尚ほ日本専門家が観察せんと希望する地方を案内する等の事は、努めて之を為さゞるべからず。[中略]
我委員部は、今回実業家の来訪を以て、米国製機械を日本に輸入するの好時機と思慮す。殊に専門に属する諸機械の如きは、一度日本に入り始むるに於ては、引続き使用さるべく、尚ほ日本を通じて清国に売拡めらるべき機会も十分に存するなり。
[中略] 訪問を受けたる各都市は、日本との貿易品たるべき希望ある物品産物に関し、日本実業家及専門家に、充分研究の便宜と余地とを与ふるを義務とせざるべからず。
[中略]
前述の各都市は、日本専門家と会合すべき各地の専門家の代表者を早急に指名せんことは、極めて望ましきことなり。
我委員の承知する所にては、日本実業家は、渋沢男爵の統御の下に渡米すべしとのことなり。一行の団長としては、渋沢男爵に優る人物ありとも思はれず。蓋し同男爵は数年前米国を訪問し、商業団体に就き親しく研究する所あり、日本の商業会議所の設立を見るに至りたるは、主として同男の勢力に依るやにも聞及べり。
尚ほ茲に一言加ふべきは、日本の商業会議所は、米国の商業会議所よりも、有力有効なるものにして、米国の商業会議所に比し、政府と密接の関係を有するが故に、立法上に於ける商業会議所の勢力は遥かに大なるものなりとす。是れ又吾人の注意に値す。
目下鉄道会社は、日本実業家一行の為に特別時間表を調製しつゝあるに由り、右出来の上は之を各市に配布し、予め発着の時間を通知するを得べし。   敬具
   一九〇九年七月十四日 シヤトルに於て
              接伴準備委員長 ブレイン
(『渋沢栄一伝記資料』第32巻p.24-27掲載)

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