栄一、実業之日本社経営の帝国実業講習会総裁として、同会の実業講習録中の一科目「実践商業道徳講話」を担当し、是日その原稿の一部を送致す。
出典:『渋沢栄一伝記資料』 3編 社会公共事業尽瘁並ニ実業界後援時代 明治四十二年−昭和六年 / 1部 社会公共事業 / 6章 学術及ビ其他ノ文化事業 / 4節 編纂事業 / 16款 栄一ノ演説・談話ヲ編集刊行セルモノ / 9 実践商業道徳講話 【第48巻p.130-132】
渋沢栄一 日記 大正一二年 (渋沢子爵家所蔵)
一月十五日 雨 寒
午前七時半起床入浴朝飧共ニ例ノ如クシテ後、実業之日本雑誌都倉義一氏ヨリ来レル実業講習録ニ掲載スヘキ、一般信用問題ニ付テノ意見筆記ヲ修正ス、午前午後勉強シテ夕方ニ至リ脱稿ス、依テ一言ヲ都倉氏ニ添ヘテ原稿ヲ郵送ス
○下略
(『渋沢栄一伝記資料』第48巻p.131掲載)
『実践商業道徳講話』は帝国実業講習会が実施する通信教育のテキストです。帝国実業講習会とは大隈重信(おおくま・しげのぶ、1838-1922)を総裁に、渋沢栄一を副総裁として1913(大正2)年に実業之日本内に開設された通信教育機関で、1922(大正11)年に大隈が逝去したことにより1923(大正12)年からは栄一が総裁に就任しています(『渋沢栄一伝記資料』第44巻p.568)
『渋沢栄一伝記資料』第48巻p.131-132には、『実践商業道徳講話』や帝国実業講習会について次のように紹介されています。
実業講習録(見本) 実業之日本社内帝国実業講習会編 第二―一九頁刊
諸君の進むべき道
帝国実業講習会総裁 子爵渋沢栄一
私は増田会長よりのお言葉で本会の総裁となつてゐるが、元来私は自分の名を出してゐる仕事に対しては、どんな事でも必ず何か為なければ自分の良心が満足しない。多くの会社・銀行又は社会的事業に関係してゐた時でも、その仕事に名を列ねてゐる限り、必ず何かして来たのである。それで私は本会に対しても大いに責任を感じ本講習録には修養に関する所信を述べてゐる次第である。
○中略
帝国実業講習会
総裁 子爵 渋沢栄一
会長 増田義一
顧問
大蔵大臣 井上準之助
[以下略]
実業講習録の十四大特長
○中略
(13) 立身出世法を懇篤に説明
本講習録には、総裁渋沢子爵閣下が御多忙な時間を特に本会のために割いて「実践商業道徳講話」と題して現代の商道を講述してをられる。○中略
実業講習録の学科と講師 この充実せる内容!この堂々たる講師!
○中略
実践商業道徳講話
帝国実業講習会総裁 子爵渋沢栄一
日本商人は世界の市場に出でて、商業道徳の観念に乏しく、信用の薄いのは嘆かはしい次第であります。
本会総裁渋沢子爵は、実践、社会に対する責任、実業家の第一に心懸くべき信用、実業家に必要な知識、事業に精神を集中する法、目的を貫徹するに必要なる忍耐、堅実なる実業青年の戒むべき投機等の商業道徳を諄々と□[欠字]か実業青年の為に説かれます。
帝国実業講習会会則
第一条 本会は実業知識の普及を目的とし「実業講習録」を発行して通信教授法に依り修学せしむ
第二条 「実業講習録」の学科は文部省令甲種商業学校教授要目及び中学教授要目に準ず
第三条 「実業講習録」は毎月二回(一日・十五日)会員に郵送し満一ケ年を以て修業す
○下略
[中略]
○「実践商業道徳講話」ハ菊版五二頁ノ小冊子ニシテ、内容項目ハ左ノ如シ。
(一) 社会に対する責任
(二) 実業家の第一に心懸くべき信用
(三) 実業家に必要なる知識
(四) 事物に精神を集中する方法
(五) 目的を貫徹するに必要なる忍耐
(六) 堅実なる実業青年の戒むべき投機
○刊行年次未詳。右ハ通信数授用教科書トシテ、逐次発刊ノ上会員ニ配布セラレタルモノナレバ、刊行年次ハ殊更ニ記載ナキモノト思ハル。
(『渋沢栄一伝記資料』第48巻p.131-132掲載)
参考:帝国実業講習会『一ヶ年卒業実業講習録』、雑誌『受験と学生』、各種雑誌新刊広告、他 (2380 東京朝日新聞 第16246号、1面、昭和6年7月23日発行)
〔東京大学総合研究博物館画像アーカイヴス 日本の新聞広告3000(明治24年−昭和20年)〕
http://www.um.u-tokyo.ac.jp/cgi-bin/umdb/newspaper1000?title=%E6%9D%B1%E4%BA%AC%E6%9C%9D%E6%97%A5%E6%96%B0%E8%81%9E&place=&publisher=&gengo1=AC&year1=1931&gengo2=AC&year2=1931¬e=%E5%B8%9D%E5%9B%BD%E5%AE%9F%E6%A5%AD%E8%AC%9B%E7%BF%92%E4%BC%9A&image=on