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 1928(昭和3)年1月24日(火) (87歳) 渋沢栄一、「帰一協会の目的についての所感」と題し所感を述べる 【『渋沢栄一伝記資料』第46巻掲載】

日栄一、日本倶楽部に於ける当協会大会に出席し「帰一協会の目的についての所感」と題して懐旧演説をなす。

出典:『渋沢栄一伝記資料』 3編 社会公共事業尽瘁並ニ実業界後援時代 明治四十二年−昭和六年 / 1部 社会公共事業 / 6章 学術及ビ其他ノ文化事業 / 1節 学術 / 7款 帰一協会 【第46巻 p.686-688】

帰一協会とは、「精神界帰一ノ大勢ニ鑑ミ、之ヲ研究シ之ヲ助成シ、以テ堅実ナル思潮ヲ作リテ一国ノ文明ニ資スル」(『渋沢栄一伝記資料』第46巻p.432掲載「規約」より)ことを目的に設立された団体で、1912(明治45)年6月20日に第1回の会合が開かれています。
渋沢栄一は協会設立時より幹事を務めていましたが、1928(昭和3)年1月24日、日本倶楽部で開催された「昭和三年一月大会」において「帰一協会の目的についての所感」と題し所感を述べました。

 講演「帰一協会の目的についての所感」
                子爵 渋沢栄一
 帰一協会も既に、設立されてから、十数年を経過した。その沿革もはつきり記憶しなくなつた程である。
 此の帰一協会が出来る以前から、道徳的、精神的な会合をつくり度いと、漠然と望んでゐた。知識が劇しい勢ひで進歩してゆくに対し、道徳の忘れられてゆく様な弊害がある様に思はれる。利害得失が明かになれば、悪い事はしなくなると云ふ学者側の意見もあるが、世の中は、その通りにも、行かない様である。
 その頃、森村[森村市左衛門]と成瀬[成瀬仁蔵]と私とが話をして、何かそうした会をつくらうと云ふ事になつた。或る時には、宗教的組織をつくらうと云ふ説さへ出た程だつた。
 兎に角、さうして、精神的問題の研究の為の会合として、これが生れたのである。どう帰着するかはわからないが、論究してゆくうちに一に帰するだらう。やがて何者かを打ち立てる基礎としてと云ふ積りだつた。成瀬の意見は、道徳的信念より出発して、宗教的信条と云ふ様なものをつくり度いと云ふ処にあつた。
 かく会が成立して、よりより集つたが、別に特別なよい考へもなく私も、御無沙汰勝ちになつて仕舞つた。併し、これは寧ろ、為さゞるには非るなり、能はざるなり、である。
 こうして切角出来た会であるから、今更、止めるのも残念である。何かよい機会が来るであらうと、気の永い話しではあるけれども、待つてゐる様なわけである。
 私も、自身も一寸帰一論を持つてゐる。それは、道徳と経済との帰一論である。そんな事も段々この会で考へて戴いたらと考へてゐる。
                           (終)
(『渋沢栄一伝記資料』第46巻p.688掲載)


参考:経営者における道徳と宗教 : 渋沢栄一と帰一協会 / 島田昌和著
(『経営論集』第17巻第1号 p.7-18)
文京学院大学文京学院短期大学図書館〕
http://cicero.u-bunkyo.ac.jp/lib/kiyo/ba2007/index.html
 

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