解題
希望学とは東京大学社会科学研究所が2005年から始めた新しい学問で、個人の内面の問題とみなされてきた希望を、社会に関わる問題として考え、個々人の希望のあり方の実態を解明しようとするものである。同研究所は2005年度から2008年度まで釜石プロジェクトを実施し、製鉄の町として知られる岩手県釜石地方に暮らす人々の語る「希望」について、様々な観点から研究を進めた。このプロジェクトに当初から関わった著者は、そこで得た知見をもとに「日本再生の道筋を導く」のを本書のねらいとしている。
まず第1章と第2章では1945年の敗戦から今日に至る日本の歴史を振り返り、日本企業が適切な事業プランを持ち、海外市場での内需を深堀りする重要性を指摘している。続く第3章では希望学釜石プロジェクトで得られた釜石発のメッセージとして「インフラ整備による外需の呼び込み」「地域ブランドの確立」「若い世代の参画と活躍」の3点を挙げる。第4章では2011年3月11日の東日本大震災以後の釜石の挑戦を紹介すると共に、2012年に釜石の企業家と市職員を米国に派遣し、ニューオリンズでハリケーンの災害からの復興に尽力してきた企業家との交流を行った渋沢栄一記念財団のプロジェクトに触れる。そして釜石で得られた知見として「地域らしさの再構築」「希望の共有」「地域内外でのネットワーク形成」の3点の重要性を掲げ、これらが釜石から3.11以前も以降も発信されていることに言及。そして第5章では日本再生の為に「革新に裏打ちされた復興」を企業家精神が切りひらくのを期待している。
目次(抜粋。第4章第3節のみ詳細を掲載)
項目 | ページ |
---|---|
序章 「希望学」とは何か | 3 |
第1章 「奇跡の復興」から「石油危機克服の優等生」へ | 15 |
第2章 「失われた20年」と世界同時不況、3.11 | 49 |
第3章 「希望学」が釜石で見たもの:3.11以前 | 73 |
第1節 『釜石には希望がある。でも、もっと、あるはずだ。』 | 78 |
第2節 「三陸の地域経済活性化と道路の役割」 | 89 |
第3節 「希望学・釜石からのメッセージ」 | 104 |
第4節 震災以前の釜石からのメッセージ | 142 |
第4章 「希望学」が釜石で見たもの:3.11以後 | 145 |
第1節 「産業復興と電力改革」 | 147 |
第2節 「スマートコミュニティをめざす釜石市の挑戦」 | 155 |
第3節 「釜石復興 3人のキーパーソンのアメリカ訪問」 | 162 |
1. 「東日本復興のための日米企業化交流促進プロジェクト」 | 162 |
2. 釜石復興の3人のキーパーソン | 164 |
3. ニューヨークにて | 166 |
4. ニューオリンズにて | 168 |
5. 岩崎昭子氏が語る釜石発の希望 | 172 |
6. 小野昭男氏が語る釜石発の希望 | 174 |
7. 佐々隆裕氏が語る釜石発の希望 | 175 |
8. 革新に裏打ちされた復興 | 177 |
第4節 震災後の釜石からのメッセージ | 179 |
第5章 希望による日本再生 | 181 |
おわりに | 203 |
外部機関の所蔵データほか
CiNii Books / Worldcat / NDL Search / Webcat Plus / Googleブックス 1,2
参考リンク
- 『希望学』:東京大学社会科学研究所 希望学プロジェクト
http://project.iss.u-tokyo.ac.jp/hope/ - 『「希望学」日本再生への道-釜石からのメッセージ』
〔東京大学社会科学研究所 希望学プロジェクト〕
http://project.iss.u-tokyo.ac.jp/hope/result/20130219.html - 岩手-ニューオリンズ交流事業「復興を通じた革新」
〔渋沢栄一記念財団 研究部〕
http://www.shibusawa.or.jp/research/project/fukko2013.html