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 『東アジアにおける公益思想の変容 : 近世から近代へ』 【日本経済評論社,2009.03】

 渋沢栄一の公益思想の歴史的位相を究明し、その今日的意義を再検討することを目的に、渋沢国際儒教研究プロジェクトによる渋沢国際儒教研究セミナーが、渋沢栄一記念財団の支援のもと2004年から2006年まで3回開催された。本書はその成果出版物。

書誌事項

東アジアにおける公益思想の変容 : 近世から近代へ / 陶徳民 [ほか] 編
 東京 : 日本経済評論社, 2009.03
 iv, 296p ; 22cm (渋沢栄一記念財団叢書)
 注記: その他の編者: 姜克實, 見城悌治, 桐原健真 ; 渋沢国際儒教研究セミナーの成果出版物

書影

東アジアにおける公益思想の変容

目次

項目ページ
巻頭言iii
解題 / 姜克実1
第I部 歴史における公益思想の諸相[13]
  第1章 【基調講演】近世中国における儒教倫理と商人精神 / 余英時 ; 陶徳民訳15
    一 『論語』における利と義15
    二 漢以降の変遷20
    三 「棄儒入賈」による商業道徳の変化23
    四 「士商互動」による義利観の変化27
  第2章 東アジアの救済施設としての社倉 : 中井竹山『社倉私議』考 / 陶徳民31
    一 近世の中国と日本における社倉31
    二 『社倉私議』作成の背景33
    三 竹山の社倉構想と「上下合体」の論理38
    四 『社倉私議』の影響43
    五 結語48
  第3章 近世における経済道徳と慈善事業との関係 : 一つの試論 / L・ロバーツ53
    はじめに53
    一 救いの義務と分離の傾向56
    二 救いにおける包括の傾向60
    おわりに65
  第4章 近世イギリスの社会公益事業 : 救貧・慈善をめぐる議論と救済の現場 / 坂下史69
    はじめに69
    一 救貧法体制の再検討 : ヨーロッパ史のなかの近世イギリス70
    二 「福祉の複合体」史72
    三 救済現場における社会改良家たち : 救貧法と慈善をまたぐ諸活動75
    四 社会公益事業の担い手と「公共性」 : 救貧法・慈善活動・「チャリティ」79
    おわりに83
第II部 近代日本における公益思想の変遷[91]
  第5章 近代日本社会の形成と儒学思想 / 姜克実93
    はじめに93
    一 「慈愛」と「仁愛」94
    二 支配イデオロギーとしての儒学96
    三 近代化と通俗道徳99
    四 近代的企業精神の創出101
    五 地方改良運動における下からの人間形成105
    六 仁政、善政、温情主義に基づく日本的労資関係の形成108
    おわりに110
  第6章 「病院」の思想 : 幕末維新期における西洋社会事業観念の展開 / 桐原健真117
    はじめに117
    一 西洋社会事業との邂逅 : キリスト教慈善精神とその理解118
    二 理想としての西洋社会事業 : 「王政」から「三代の治」へ122
    三 西洋社会事業思想の見聞と受容 : 理想から実現へ128
    おわりに131
  第7章 渋沢栄一にみる公益という名の慈善 : 東京養育院に関わる / 山名敦子137
    はじめに137
    一 養育院の濫觴と渋沢の関係138
    二 東京府養育院の処分問題をめぐる背景140
    三 養育院処分問題において渋沢が選択した価値的態度143
    四 東京市区改正審査会における渋沢の論理と価値志向145
    五 養育院院長渋沢と商工会代表渋沢の矛盾と接点148
    六 慈善をデザインするなかにみる苦悩150
    七 実業家渋沢にみる公益としての慈善性153
    まとめにかえて155
  第8章 留岡幸助の慈善事業思想 : その形成と展開 / 室田保夫165
    序 : 近代社会と慈善事業の誕生166
    一 思想的基盤キリスト教168
    二 暗黒への視座 : 監獄改良事業171
    三 文明国での衝撃 : 米国での体験173
    四 慈善の理論化 : 『慈善問題』175
    五 欧米訪問と日本 : 近代性と土着性182
    結びにかえて185
第III部 近代中国の公益思想[193]
  第9章 中国社会福祉史上における近代の始まり : 特に「教養兼施」の「新しさ」について / 夫馬進195
    はじめに195
    一 「善挙」から「慈善事業」へ200
    二 教育と収養を兼ねて施す207
    三 世界史の中での「教養兼施」213
    結語220
  第10章 近代中国実業家の社会奉仕 : 張謇の慈善・公益思想と活動 / 朱英 ; 姜克実訳229
    一 張謇の慈善・公益事業の実践229
    二 張謇の慈善・公益事業の実践の特徴236
  第11章 近代南通における社会保障システムの構築と張謇の役割について / 趙明遠 ; 尾崎順一郎訳245
    一 「王政」の理想と「自治」の目標246
    二 「仁学」という根源と「牛馬」の精神249
    三 「慈善の浸透」および「扶助と教育」の結合253
    四 余論258
  第12章 張謇・熊希齢にみる近代社会公益思想の展開 : 渋沢栄一との比較を通して / 陳瑋芬263
    一 「仁道」と「人道」263
    二 張謇・熊希齢その人265
    三 慈善観の形成、および慈善事業に関する発案268
    四 宗教・救済と救国275
    おわりに283
編集後記291
編者・執筆者・訳者紹介296

外部機関の所蔵データほか

NDL-OPAC / CiNii Books / Worldcat / NDL Search / Webcat Plus / Googleブックス 1,2

関連エントリー

参考リンク