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公益財団法人渋沢栄一記念財団情報資源センターがお送りするブログです。
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 1931(昭和6)年10月19日(月) (91歳) 渋沢栄一、エジソンの死去を悼み遺族に弔電を発する  【『渋沢栄一伝記資料』第40巻掲載】

日栄一、トーマス・エー・エディソンの死去を悼み、その子息に弔電を発す。

出典:『渋沢栄一伝記資料』 3編 社会公共事業尽瘁並ニ実業界後援時代 明治四十二年−昭和六年 / 1部 社会公共事業 / 3章 国際親善 / 7節 其他ノ資料 /4款 慶弔 【第40巻 p.626】

渋沢栄一電報控  トーマス・エー・エディソン子息宛一九三一年一〇月一九日
                     (渋沢子爵家所蔵)
    MISTER THOMAS EDISON, JUNIOR, NEWARK, NEWJERSEY.
                Tokyo Oct. 19, 1931
DEEPLY MOURN LOSS OF GREAT BENEFACTOR OF MANKIND EXPRESS SINCERE CONDOLENCE AND SYMPATHY
                      SHIBUSAWA
(『渋沢栄一伝記資料』第40巻p.626掲載)

渋沢栄一は1909(明治42)年に渡米実業団団長として訪米した際、エジソン電気会社を訪問しトーマス・エジソン(Thomas Alva Edison、1847-1931)夫妻および同社重役と接見しています。栄一はその時のことを、後年エジソンに宛てて送った書簡の中で、次のように回顧しています。

[前略] 小生は去一九〇九年渡米実業団長として貴国旅行の際、ニユーヨーク市ニ於ける貴会社ニ御招待を蒙り、種々御歓待を受けたる後、始めてコンクリート造家屋を見、其説明を貴台より承り候事を鮮かニ記憶致居、[後略]
(『渋沢栄一伝記資料』第54巻p.318掲載、「渋沢栄一書翰控 トマス・エー・エディソン宛」(1926.10.14)より)

また、栄一は1922(大正11)年2月12日、東京で開催された「ヱヂソン翁第七十五回誕辰祝賀会」で同会会長を務め、エジソンの功績について次のように語っています。

[前略] 翁の為したる発明の数は洵に多数にして、何れも人類の幸福と文化の向上に偉大の貢献を為したるものであります、就中其の最も重要なるものは電灯・蓄音器・活動写真・電気通信に関するものであります[、]而して其電灯の炭素線の発明は我が国の旧都たる京都府八幡の竹に依り完成せられたのであります、八幡の竹は我国武士の魂と称へらるゝ刀剣の目釘に用ひられて最良のものとせられて居りますが、其竹がエヂソン翁の大慈悲心と大円鏡智とに依り、人類に大光明を与へたるは軈て我国の武士の魂が、翁により平和の大光輝を発したるものとして甚深の感興を禁ずる能はざる次第であります、[中略] 翁の蓄音器及活動写真の発明も亦、実に人類発達史を飾る一大創作であると信じます、天地の創造者は人類に死を与へて永久に其生命を奪つて居ります、然るにエヂソン翁は人をして無窮に活かしめました、即ち人間の生命のシンボルたる肉声と動作とを、永久に伝へしむることに成功したのであります、斯くてビスマーク・グラツドストン・テニスン・ブロウニングは今尚生き、現代の偉人は永世不死たることを得て各人は其欲する儘に其謦咳風貌に接することが出来るのであります、故に翁は生命の創造者として、特に恵まれたる新時代の一大偉人であると信じます、且つ蓄音器や活動写真は教育上・慰安上至大の効用あるものなることを思へは、翁は人類に平和と進歩とを齎したる天使なりと存じます。
 エヂソン翁は実に偉大なる発明家であります、[中略] 翁の生活は唯勤勉努力の結晶でありまして、翁が謂つた『煩悶する勿れ唯働け、然らば有ゆる障碍を排して長命を得る事疑なし』との言は、紛糾錯綜せる現代社会に取りては誠に頂門の一針であります、今や翁は其第七十五回の誕辰を迎へられたのでありますが其千余に達せる大小の発明は悉く全人類の平和と幸福とに捧げられ国境と人種との隔りを超越し、時代を透徹して拡がりつゝあります、斯くて翁は実に人類を無窮に活かしめたると共に、翁の功業も亦無窮に活きるものと存じます、翁の恵沢を感謝し翁の高寿を祝福するは人類及国家の道徳上より考慮致しまして、極めて意義深長なるべき事を信じて疑ひませぬ、茲に感謝と祝賀の熱情を披瀝し、併せて翁の健康を祈る次第であります。[後略]
(『渋沢栄一伝記資料』第38巻p.300-301掲載、帝国発明協会編「ヱヂソン翁第七十五回誕辰祝賀会報告」(1923.05)p.11-13より)



参考:科学技術何でもQ&A(エジソン
〔科学技術おもしろclub - 東京電機大学
http://www.dendai.ac.jp/d7_kagaku/4_open01.html