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公益財団法人渋沢栄一記念財団情報資源センターがお送りするブログです。
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 大村敦志著『穂積重遠 : 社会教育と社会事業とを両翼として』 【ミネルヴァ書房,2013】

書誌事項

穂積重遠 : 社会教育と社会事業とを両翼として / 大村敦志
 京都 : ミネルヴァ書房, 2013.04
 xxiii, 321, 8p, 図版1枚 ; 20cm(ミネルヴァ日本評伝選
 注記: ISBN: 9784623065882

本書と渋沢栄一との関係

 穂積重遠(ほづみ・しげとお、1883-1951)は、渋沢栄一の長女歌子(1863-1932)と法学者穂積陳重(ほづみ・のぶしげ、1855-1926)の長男。本書は巻頭に関係系図を掲げ、続く「序章」では穂積家と渋沢家との関わりをまとめている。また重遠が栄一から引き継いだものとして、「社会事業への関心」「フランスへの関心」「論語への関心」の3点を挙げている。

目次

項目ページ
はじめに : 大正は遠くなりにけり(1977)i
昭和も遠く/大正法学の現代性/いまも生きる問題意識/時代の子、社会の子として/法・法学とは何か
序章 子として、孫として : 多面体の揺籃(1883〜1904)1
華麗なる一族/父の学問/「明治一法学者」と「大正一法学者」/母の日常/王子の大人/『論語講義』から『新訳論語』へ/渋沢同族会と青年たち/附属の小僧/文武両道/桐蔭会歌
第1章 継走のために : 旅立ちのとき(1904〜17)15
  1 青年・重遠 : 旧制一高から東京帝大へ16
宇和島旅行/「都の空に」/「清国留学生を迎ふ」/新渡戸校長と排斥運動/三四郎世代/法典編纂後の民法講義/親族法・相続法への関心/重遠の勉強法/畏友・鳩山秀夫との「決戦」/「夏がくれば思い出す」/初講義/結婚/挙式届出同日主義
  2 観察者・重遠 : 『欧米留学日記』と『留学思出話』34
独国仏国及英国ヘ留学ヲ命ス」/神戸からマルセイユまで/鳩山との交友/ドイツ法学を学ぶ/イギリス法学への関心/見学と遠足の日々/ベル・エポックのパリ/大戦勃発とスイス旅行/感情と勘定/私たちの判事さん/正義と識別と仁愛/王室と国民/サフラジェット/アメリカへ/「アストイフ ケフノナガサヨ ハルノウミ」
  3 新進学徒・重遠 : 『戦争ト契約』から『離婚制度の研究』まで62
『戦争ト契約』/「婚姻予約判決ノ真意義」と「男子貞操義務の真意義」/「フェミニズム」と『婦人問題講話』/『法理学大綱』と『法学通論』/『親族法大意』と『親族法』/『国際心のあらはれ』と『日本の過去現在及び将来』/『判例民(事)法』と『判例百話』/『民法総論上下』と「債権法及び担保物権法講義案」/『離婚制度の研究』/二つの別れ : 研究書と愛息/さらに二つの別れ : 法理学と親友
第2章 希望にみちて : 立法と社会教育・社会事業(1918〜31)83
  1 立法家・重遠 : 大正改正要綱と改正弁護士法・児童虐待防止法84
ロシア革命と臨時教育会議/臨時法制審議会での活躍/諮問第一号と第二号/大正改正要綱/新進学徒の面目躍如/新しい女からモダン・ガールへ/人事法案と戦後改正/私立法律学校と代言人/弁護士法の改正への情熱/養育院から子どもの家へ/児童虐待防止法の制定
  2 社会活動家・重遠 : 東大セツルメントと社会教育協会98
関東大震災の救護活動/復興期の精神と「社会」の登場/焼跡バラック問題/調停による解決/建物よりも生活を/東京帝大セツルメントの設立/セツルメントの思想/法律相談部の活動/優しい語り口/セツルメントと左翼学生/帝大セツルメントの終焉/引き継がれるセツルメントの灯/社会教育協会と小松謙助/協会の理念と事業/さまざまな出版物/東京家庭学園
  3 教育家・重遠 : 夏期大学・明大女子部・公民教科書・有閑法学123
大学拡張運動/夏休みの講演旅行/明大女子部と女性法曹/重遠の抱負と講義ぶり/黎明期の女性法律家たち/「民法講義要領」から『民法読本』へ/法律心を鍛錬する/ラジオで魅せる天性の話術/法科大学の開放/「法育」としての公民教育/公民教科書の編集/「非法律家を法律家に、法律家を非法律家に」/『有閑法学』の真意義/「法は社会教育」「法は社会事業」/後継者としての我妻栄/我妻から加藤・星野へ
第3章 家族法のパイオニアとして : 「人と人の結合にあり」(1933)153
読める概説書/離婚法に表れる特色/「ギールケ著『独逸団体法論』に就て」/末弘書評/末弘と平野の異同/書かれざる「理論」観/マテリアルとしての『親族法』/『親族法』と戦後改革/『相続法』公刊の理由/家族法(学)の戦後と現在/立法資料としての『親族法』『相続法』/「おんな」「こども」の法学/『結婚訓』と『結婚読本』のあいだ/社会と歴史と法学/人間の法学
第4章 難局をいきる : 公人として、私人として(1931〜45)173
  1 大学人・重遠 : 滝川事件から学徒出陣まで175
滝川事件/東大への影響/平賀粛学/法学部の対応/緑会再編/「僕の学生」/学生の自覚を促す/結婚・就職・奨学金/小田村事件/紀元二六〇〇年事業/新体制運動/学徒出陣/「大学生活四十年」/革新か保守か、社会か自由か
  2 家庭人・重遠 : 夫として、父として、兄として、舅として197
家族写真の変遷/「行チャン、ワカチャン、ミヨチャン」/穂積家の団欒風景/穂積家の春夏秋冬/「酒は母の涙と心得て飲め」/「仲子日記」/気にかけていた出来事/律之助と真六郎/玲子の見た重遠/三人の子どもたち/重行と教育再興/美代子と女性文学/教育大学閉学/平成のセクハラ訴訟
  3 文化人・重遠 : 『独英観劇日記』『歌舞伎思出話』の周辺220
ロンドンの三浦環/戦中の『独英観劇日記』/戦後の『歌舞伎思出話』/穂積家と歌舞伎/百人一首コレクション/古川柳法律学/重遠の歌日記/「自由画と自由法」/通俗文学への愛好/朝鮮文化への関心/聖書を読み、フランス語を学ぶ/趣味か文芸か/谷崎潤一郎をめぐって
第5章 新生にむけて : いまこそ、われらの法を(1945〜51)237
  1 大夫・重遠 : 「任重く、道遠し」238
葉山の照宮/皇后へのご進講/「重遠ならよし」/木戸・広幡との関係/日光で終戦を迎える/御座所問題と学習院存廃問題/昭和天皇の意向/戦後のご進講/天皇制とアワ・キング/新旧交代の舞台裏/花道でなく/皇太子から天皇へ/「国民の良識」の体現
  2 法官・重遠 : 法と道徳、尊属殺違憲論を通じて261
帝人事件特別弁護人/最高裁判事の日々/アメリカ再訪/尊属殺違憲をめぐって/少数意見の内容/四半世紀を経て/法と道徳/書名に込めた想い/民法改正/陪審について/「戦後」の終わり
終章 市民=法学者として : 翼を広げて(1952)281
再評価の視点/気品の高い「忠臣」/市民であるか否か/重遠には理論がなかったか/法現象の認識を目指して/士大夫あるいはジェントルマンとして/市民=士大夫たれ/心理は細部に顕現/完結・峻別よりも開放・架橋を/春風駘蕩の人/大正一法学者の「相続人」たち/失われた「遺産」を求めて
主要参考文献297
あとがき311
穂積重遠略年譜317
人名・事項索引巻末1

外部機関の所蔵データほか

NDL-OPAC / CiNii Books / Worldcat / NDL Search / Webcat Plus / Googleブックス 1,2

参考リンク