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『論語と算盤』【東亜堂書房, 1916.09】

書誌事項

論語と算盤 / 渋沢栄一述 ; 梶山彬編
 東京 : 東亜堂書房, 1916.09
 3, 11, 409p, 15cm
 縮刷名著叢書 ; 第37編

解題

 梶山彬が編纂した渋沢栄一の訓話集。1916(大正5)年9月に東亜堂書房よりシリーズ「縮刷名著叢書」の第37編として刊行された。
 編者による「凡例」には、同書は渋沢の意志によって作られたものではなく、「特に快諾を得て蒐集編纂」したものとある。渋沢が提唱した「道徳経済合一」の考えを象徴する言葉として知られる「論語と算盤」をタイトルとした理由は、渋沢が道徳と経済の一致を「創唱し実践し、身を以て範を垂れ、且つ筆に舌に鼓吹せられつ〻あるの精髄」にあるとしている。
 本文は、渋沢栄一記念財団の前身である竜門社の機関誌『竜門雑誌』や、渋沢栄一著『青淵百話』(同文館, 1912.06. 縮刷: 1913.07)に掲載された渋沢の談話記事等を梶山が編纂し、10のテーマの下に90の訓話を収めるとともに、巻頭・巻末・一部の章末に論語や准南子などからの格言を併載する。
 2024年9月現在、4版(4刷)までが確認されている。いわゆる「袖珍本」と言われる小型本で、表装のクロスは緑色と紺色の2種。外函あり。初版では1円だった価格は再版販売中に上昇し、1920(大正9)年の4版では1円50銭となった。初版と再版は、奥付を除き同じ紙型を使用している可能性が高い。印刷所が変更となった3版・4版では本文にごく少数の異同があるほか、ノンブルが振られていない巻末広告が割愛されているため総ページ数には違いがある。また、3版の奥付は同シリーズにおける別タイトルの紙型を流用したためか、責任表示が誤って「著作者村上信」となっている。
 なお、2008(平成20)年11月11日、渋沢栄一記念財団と東京商工会議所新宿支部「論語と算盤」初版(大正五年)復刻版刊行委員会により、東京商工会議所創立130周年記念として早稲田大学図書館が所蔵する再版本をもとにした復刻版が刊行された(限定1,000部、頒布価2,000円)。

版(刷)

発行年月日発行所発行者印刷者印刷所価格
初版1916.09.13東亜堂書房伊東芳次郎今村扶凸版印刷株式会社分工場1円
再版1916.09.25東亜堂書房伊東芳次郎今村扶凸版印刷株式会社分工場1円
3版1918.12.28東亜堂書房伊東芳次郎川瀬精一郎株式会社共栄舎1円20銭
4版1920.09.10株式会社東亜堂木村定次郎百目木智璉株式会社共栄舎1円50銭

書影(再版)

論語と算盤_東亜堂

目次

項目ページ
凡例 / 編者[梶山彬]1
格言七則[4]
目次1
格言五則[12]
処世と信条1
 論語と算盤は甚だ遠くして甚だ近いもの [目次: 論語と算盤とは甚だ遠くして甚だ近いもの]1
 士魂商才3
 天は人を罰せず10
 人物の観察法13
 論語は万人共通の実用的教訓17
 時期を待つの要あり22
 人は平等なるべし26
 争ひの可否30
 大丈夫の試金石35
 蟹穴主義が肝要39
 得意時代と失意時代43
 [格言]49
立志と学問50
 精神老衰の予防法50
 現在に働け58
 大正維新の覚悟62
 秀吉の長所と短所65
 自ら箸を取れ69
 大立志と小立志との調和74
 君子の争ひたれ79
 社会と学問との関係85
 勇猛心の養成法89
 一生涯に歩むべき道92
 [格言]95
常識と習慣96
 常識とは如何なるものか96
 口は禍福の門なり102
 悪んで其の美を知れ105
 習慣の感染性と伝播力110
 偉き人と完き人115
 親切らしき不親切117
 何をか真才真智と謂ふ122
 動機と結果128
 人生は努力にあり131
 正に就き邪に遠ざかるの道135
 [格言]138
仁義と富貴139
 真正の利殖法139
 効力の有無は其人に在り144
 孔夫子の貨殖富貴観148
 防貧の第一要義152
 罪は金銭にあらず157
 金力悪用の実例163
 義理合一[義利合一]の信念を確立せよ168
 富豪と徳義上の義務173
 能く集め能く散ぜよ178
理想と迷信183
 道理ある希望を持て183
 この熱誠を要す186
 道徳は進化すべきか189
 斯の如き矛盾を根絶すべし193
 人生観の両面197
 これは果して絶望か201
 日新なるを要す205
 修験者の失敗209
 真正なる文明214
 発展の一大要素220
 廓清の急務なる所以223
 [格言]227
人格と修養228
 楽翁公の幼時228
 人格の標準は如何235
 誤解され易き元気240
 二宮尊徳と西郷隆盛243
 修養は理論ではない249
 平生の心掛が大切254
 須らく其の原因を究むべし259
 東照公の修養265
 誤解されたる修養説を駁す270
 権威ある人格養成法273
 商業に国境なし277
 [格言]281
算盤と権利282
 仁に当つては師に譲らず282
 金門公園の掛札288
 唯王道あるのみ292
 競争の善意と悪意297
 合理的の経営302
 [格言]307
実業と士道308
 武士道は即ち実業道なり308
 文明人の貪戻312
 相愛忠恕の道を以て交はるべし318
 天然の抵抗を征服せよ322
 摸倣時代に別れよ326
 此にも能率増進法あり330
 果して誰の責任ぞ336
 功利学の弊を芟除すべし340
 此の如き誤解あり345
教育と情誼349
 孝は強ふべきものに非ず [目次: 孝は強ふべきものにあらず]349
 現代教育の得失353
 偉人と其の母360
 其罪果して孰れに在りや [目次: 其の罪果して孰れに在りや]364
 理論より実際368
 孝らしからぬ孝372
 人物過剰の一大原因378
 [格言]382
成敗と運命383
 それ唯忠恕のみ383
 失敗らしき成功387
 人事を尽して天命を待て392
 湖畔の感慨395
 順逆の二境は何れより来るか397
 細心にして大胆なれ402
 成敗は身に残る糟粕405
格言五則[410]
奥付[411]
広告巻末

外部機関の所蔵データほか

NDLサーチ / CiNii Books

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参考リンク