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公益財団法人渋沢栄一記念財団情報資源センターがお送りするブログです。
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 渋沢史料館「常設展示」の変遷 : 青淵文庫時代(1982年〜1997年)

 1982年(昭和57)11月15日東京・飛鳥山公園に開館した渋沢史料館は、1998年(平成10)に新しい本館に移転するまで、大正期の建物である青淵文庫で渋沢栄一の事績を紹介する常設展示を行っていました。どのような展示を行っていたか、渋沢史料館刊行資料の記事からご紹介します。なお、新本館における常設展示については、2000年(平成12)に刊行された『常設展示図録』に掲載されています。

開館当初 : 「渋沢史料館だより」第1号より

 開館から3か月後の1983年(昭和58)2月に発行された「渋沢史料館だより」第1号(*)には、開館当初の展示概要が記載されています。それによると3室に分かれた展示の「第1室」には、竜門社関係、渋沢同族会、近親者著書と旧邸俯瞰図などが3ケースに収められていました。「第2室」には栄一の生涯を在郷時代、幕府仕官時代、大蔵省在職時代、関係会社、公共・福祉関係、国際親善、遺品、という区分で展示し、写真や家具、木像なども置いて栄一の足跡を紹介しました。「第3室」には名家書簡、栄一手沢本、渋沢敬三資料等を展示し、閲覧席も設けて史料目録を置いていました。
*渋沢史料館の運営母体である公益財団法人渋沢栄一記念財団(当時は渋沢青淵記念財団竜門社)の機関誌『青淵』第407号 p46に掲載

開館当初の常設展示(『青淵』407号 p46より抜粋)

部屋展示品
第1室ケース1竜門社関係
ケース2渋沢同族会
ケース3近親者の著書、旧邸俯瞰図
壁面栄一揮毫「前赤壁賦」全文、渋沢家系図
本箱「竜門雑誌」合本、「渋沢栄一伝記資料」全巻
第2室ケース1在郷時代
ケース2幕府仕官時代
ケース3大蔵省在職時代
ケース4関係会社
ケース5関係会社
ケース6公共・福祉事業
ケース7国際親善
ケース8遺品
壁面遺墨、国際親善関係スナップ、肖像画
家具机、戸棚
コーナー栄一木像2体
第3室ケース1名家書簡
ケース2名家書簡
ケース3栄一手沢本
ケース4敬三史料
ケース5敬三史料
壁面清国公使何如璋、徳川慶喜、栄一の書
家具史料閲覧者用テーブルと椅子

1985年3月現在:『渋沢史料館年報. 昭和59年度』より

 開館から3年後の1985年(昭和60)に創刊された『渋沢史料館年報』には、同年3月現在の展示の概要が写真と共に記されています。それによると当初の展示配置から多少の移動があった様子で、渋沢史料館全体像を示した「導入コーナー」に始まり、展示の概要を示した「第1展示室」が続きます。次の「第2展示室」は栄一の在郷時代から財界時代までを扱い、展示の核となるものでした。「第3展示室」は財界引退後の栄一の諸活動を扱い、最後に「渋沢敬三コーナー」をもうけて嫡孫敬三の活動を示していました。

施設の概要(『渋沢史料館年報. 昭和59年度』p4-5)
  • [建物配置図]
    建物配置図
     
  • [青淵文庫見取り図]
    青淵文庫見取り図
     
常設展示の概要(『渋沢史料館年報. 昭和59年度』)

項目ページ
常設展示(昭和60年3月現在)17
導入コーナー17
第1展示室17
  飛鳥山18
  竜門社18
  渋沢同族会18
第2展示室18
  在郷時代19
  一橋家・幕府・静岡藩仕官時代19
  民部・大蔵省出仕時代19
  財界時代19
第3展示室19
  国際親善20
  教育関係20
  社会福祉事業20
  終焉21
渋沢敬三コーナー21
  政財界での敬三21
  民俗・民族学と敬三21
  交遊21

1986年の増設 : 『渋沢史料館年報. 昭和61年度』より

 開館から4年後の1986年(昭和61)3月には、第3展示室内にあった研究事務コーナーが分室に移転し、資料閲覧コーナーが撤去されました。それにより展示スペースが拡張し展示が増設されたことが、『渋沢史料館年報. 昭和61年度』のp.2-3に記載されています。増設内容として紹介されているのは、「改正掛」「日常の栄一:写真パネル」「遺品」「敬三の趣味」です。また第3展示室を「第2展示室」として栄一の少年期から終焉までを集中したこと、第2展示室を「第3展示室」として栄一の日常、敬三コーナー、書簡の内容でそれぞれ充実させたことも記されています。

1992年の一部閉鎖と移動 : 「渋沢史料館年報. 1992年度」より

 開館から10年後の1992年(平成4)4月1日に、渋沢青淵記念財団竜門社(現・渋沢栄一記念財団)の全敷地が東京都北区に譲渡されました。それに伴って敷地内の第1資料室、倉庫I、IIが取り壊されたため、第3展示室を収蔵施設として利用すること、また青淵文庫の裏に3基のコンテナを設置し、資料を収蔵することになったことが、「渋沢史料館年報. 1992年度」p.33(『渋沢史料館年報. 1993年度』収載)に記載されています。それによると、閉鎖した第3展示室にあった「日常の栄一を示す写真パネル」と「栄一に宛てられた書簡」は第2展示室に展示、その他(遺品、敬三コーナー等)は撤収・保存することにしたそうです。

1998年の新館移転 : 『渋沢史料館年報. 1998年度』より

 渋沢史料館は1998年(平成10)3月に新本館へ移転開館しましたが、その準備のため1997年5月1日から閉館して移転作業にあたったことが、『渋沢史料館年報. 1998年度』序文に記されています。従って青淵文庫における常設展示は同年4月30日まででした。

参考リンク